拡大する電子コミック市場 調査から見えたユーザーの変化と問題点

全国出版協会の発表によると、2017年の紙と電子を合わせたコミック全体の市場規模は前年比2.8%減の4330億円。そのうち電子は1747億円(同17.2%増)、特にコミックス(単行本)では初めて紙を電子が上回り、電子コミック市場は増加しているといいます。
そこでフィールズ総研でも電子コミックの状況について分析したところ、若者、特に高校生で特定の電子コミック媒体の利用が激減している傾向が見えてきました。その辺りを中心に電子コミック市場について報告させていただきます。

 

■利用率は24% 20代ではおよそ半数が利用

フィールズ総研が毎年12月に行っている余暇に関するアンケート調査「Fields Yoka Survey(フィールズ よか サーベイ)」(以下、FYS ※1)では、電子コミックの利用状況についても調査をしています。

性年代別電子コミック利用率

FYS2018によると、電子マンガの利用率は全体で24.0%。性年代別に見ると、男女とも20代が最も高く、男性20代は44.7%、女性20代は50.5%となっています。

媒体別電子コミック利用率

また我々が独断と偏見で選出した電子コミック主要30媒体(※2)別では、最も利用されているのはLINEマンガで4.2%、次いで少年ジャンプ+、comicoと続いています。
さらに前年との比較や性年代別の利用を見るといくつか気になる点が見えてきました。

 

■若年層の利用に変化が! その原因は…

comico性年代別利用率

1つはcomicoの利用率の低下です。利用率は2.5%で第3位ですが、前年の3.6%と比較すると1.1ptのマイナスになっています。つまり利用者が3分の1ほど減っている可能性があります。特に男性10代で5.2pt減、20代で4.2pt減、女性10代で2.9pt減と若い年代での減少が著しいようです。

理由は恐らく、comicoを利用していた人なら予想できるかもしれませんが、2016年12月に行われたリニューアルの影響と思われます。それまで全作品、全話無料であったサービスが有料化されたことです。レンタル券という無料で閲読できる方法もあるのですが、ユーザーからは不満の声が多く上がったようで、特に自由に使えるお金が少ない若年層にその影響が強く出ているものと思われます。

ただし、有料化で3分の1も減ったと見るか、有料化したのに3分の2も残ったと見るのかについては、判断が分かれるところかと思われます。

男女高校生媒体別電子コミック利用率

2つ目の気になった点は10代、特に高校生の媒体別の利用率が前年と比べて激減していることです。

男子高校生は、さきほどのcomicoが16.2pt減というのを筆頭に、マンガボックス7.0pt減、pixiveコミック3.9pt減、少年ジャンプ+3.5pt減など。女子高校生はLINEマンガ13.6pt減、comico9.3pt減、コミックシーモア6.5pt減、Renta3.3pt減など、多くの媒体で利用率が低下しています。

理由としては、高校生を中心とした若い人の間では、既に電子コミックが行き届いてしまって減少に転じた可能性や、インスタグラムなどに代表される相変わらずのSNS人気の高まりでマンガを読む時間が減った可能性など、様々なことが考えられます。

しかしその中でも大きく影響しているのは、近頃ニュースやワイドショーでも多く取り上げられていた海賊版マンガサイトの存在ではないかと考えます。

そう考える理由として
・上記のようにいくつかの媒体で利用率が大幅に減少している
・逆に、我々が調査した媒体の中で利用率が大幅に増加しているものはない
・同時に、高校生の電子マンガの利用率自体はほぼ横ばいとなっている
という3つのことから、我々が調査をした媒体以外に利用が増えた媒体があると考えられるためです。
我々が調査をしていない媒体で、昨年話題になったものといえば「海賊版マンガサイト」であり、その利用が増えたものと推測しました。
もちろん、電子コミックを提供しているサービスは非常に多数存在しており、このデータだけで海賊版マンガサイトの利用が影響し、他の電子コミックサービスの利用が低下しているというのは早計かもしれません。
しかし、comicoが有料化され高校生を中心とした10代が離れていったことを考えると、無料で好きなマンガが制限なく読める海賊版サイトに人々が流れて行ったと考えるのは、さほど想像に難くないのではないでしょうか?

高校生の利用状況から上記の仮説を導き出しましたが、データを見る限りでは高校生以外でも、20代や30代、40代に至るまでの相当数が、我々が調査をした電子コミック媒体以外の媒体を利用して電子コミックを読んでいることもわかりました。

マンガの利用のされ方が変化の過渡期にあると考えられる今、出版社を横断したユーザーが使いやすい公式のサービスや、マンガを読むこと以外にお金を払う仕組みづくりなどが求められますが、まだ実現されていません。もちろん作り手側には知恵を絞ってもらい、より良い方法を模索してほしいと思います。しかし、それができていないことを理由に、他人が作ったコンテンツを許可もなく利用し、お金を儲けるなどし、作り手が本来得るべき利益を邪魔する海賊版サイトは許し難いものです。海賊版サイトに関しては「見ない、使わない、広めない」というのは読み手ができる最初の対策だと思います。マンガをはじめとした様々な良作に今後も出会うためには、我々ひとり一人が不正を行わない、不正を許さない姿勢で臨むことも大切ではないでしょうか。

(記事:M.Ota)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。
———————–
(※1)「Fields Yoka Survey」
毎年12月に全国の小学生~69歳の男女1万人以上に対し、余暇に対する行動や、価値観などについて実施したWebアンケート調査。FYS2018は2017年12月に行った調査。FYS2017は2016年12月に行った調査。今回の分析では9歳以下を除外した人を対象に分析を行っています。

(※2)主要30電子コミック媒体
FYS2018で調査を行った電子コミックを閲読できる媒体のことで、世の中的にこの媒体が主要という意味ではありません。具体的には、LINEマンガ、少年ジャンプ+、comico、Renta、めちゃコミック、コミックシーモア、楽天Kobo、Kindle※、pixivコミック、ニコニコ静画、まんが王国、マンガワン、ピッコマ、マンガボックス、GANMAなどの30媒体。(※KindleにはKindle Unlimitedを含みません)

———————–

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です