2.5次元ミュージカルが拡大する中で、”舞台”というメディアの持つ力を考える

演劇やミュージカルなどの舞台作品を観に行ったことがありますか?国内の有名な劇団では、宝塚歌劇団や劇団四季などがあるでしょう。また、昨今では「2.5次元ミュージカル」と呼ばれる、マンガ・アニメ・ゲームなどの二次元の作品を原作とした舞台も、若年女性を中心に人気を集めています。

そんな昨今、”舞台”という市場の規模や客層はどのようになっているのでしょうか?今回は、ウェブアンケートに基づく集計から、舞台市場の現状について見てみます。

 

■舞台作品は女性を中心としたメディア

フィールズ総研では毎年12月に、余暇に関するアンケート調査「Fields Yoka Survey ※1」(以下、FYS)を約1万人に対して実施しています。その中から、「舞台・演劇・ミュージカル」の観劇に関連する設問を使って、舞台市場の概観を見てみましょう。

まず、直近1年間に「舞台・演劇・ミュージカル」(グラフ中では「舞台等」と表記)に足を運んだある人の割合を見ると、調査対象である1万人のうち、10.9%となっています。主要な外出余暇と比較してみると、水準としてはハレの余暇代表格である海外旅行と同程度のようです。

主要な外出余暇の利用率比較

性年代別での鑑賞率を見てみると、全体的に女性が多く、最も多い60代女性では20.5%の人が鑑賞経験がありました。次いで、50代女性(16.8%)、20代女性(16.2%)となっています。このように、現在の舞台観劇は女性が中心になっていることがうかがえます。なお、男女ともに30~40代で割合が低くなるのは、核家族世代の中心にあたる年代のため、仕事や家庭環境により多忙な年代だからだと思われます。

舞台・演劇・ミュージカルの性年代別の鑑賞率
※集計の都合上、10歳未満の回答は省略しています
※男性10代は、母数が少ないため参考値です

 

■熱心なファンは20代女性が中心

さて、ではお金の使い方を見るとどうでしょうか?こちらは、鑑賞率とは少し様相が異なります。

1年あたりの平均利用金額を見ると、利用率では3位だった20代女性がトップとなっています。また、観劇1回あたりの消費金額の内訳をみてみると、「チケット料」、「飲食代」は概ね年代があがるほど多くなっていきますが、「商品・グッズ」の項目は20代女性が多い結果となりました。つまり、20代女性は少数精鋭的なコアファン層を多く抱えている年代であることがうかがえます。

舞台・演劇・ミュージカルの性年代別の年あたり利用金額(利用者のみ)
※集計の都合上、10歳未満の回答は省略しています
※男性10代は、母数が少ないため参考値です

観劇1回あたりの「商品・グッズ」購入金額
※集計の都合上、10歳未満の回答は省略しています
※男性10代は、母数が少ないため参考値です

 

■2.5次元は舞台コンテンツの入り口にもなる

さて、「20代女性に熱心なファンが多い」という結果から連想するのは、2.5次元ミュージカル(以下、「2.5次元公演」)の存在です。今回の集計で抽出された人々がそのファンであるかどうかは分かりませんが、ここからは、2.5次元公演について触れながら、メディア展開の中での”舞台化”について考えてみたいと思います。

先述の通り、2.5次元ミュージカルとは、マンガ・アニメ・ゲームなど二次元の作品を原作とするミュージカルや演劇など舞台作品の総称で、若年女性を中心に広がりを見せています。

ぴあ総研の推計によると、2016年の2.5次元公演は、タイトル数、公演回数、動員数、市場規模のいずれも前年より増加しています。まさに今のりにのっているジャンルと言えるのではないでしょうか。

FYSでは、「直近1年間で触れた書籍、マンガ、アニメ、映画、ドラマ、ゲーム、舞台などの作品で最も印象に残った作品」を聞いています。舞台作品をあげている人の人数は前回の調査時からあまり変化はないものの、内容の内訳を見てみると、『ハイパープロジェクション演劇ハイキュー』や『ミュージカル刀剣乱舞』などの「2.5次元公演」のタイトルは前回調査時と比べて人数で約2倍、比率で約3倍に増加しています(※母数が少ないため参考値)。

最も心に残った舞台作品の内訳推移

このように、2.5次元公演は舞台というものへの入り口として機能しているのではないかな、と思えます。

昨今では、2.5次元公演はテレビや雑誌でもよく特集が組まれていますし、その存在自体が今までよりも広範囲の人に浸透してきているでしょう。公演数の増加にともなって制作技術やノウハウも蓄積し、舞台としてのクオリティも全体として上がっていると思います。そうした背景の中で、これまでは「2.5次元なんて…」とイロモノ的な視線を向けていた人でも、「自分の好きな作品であれば観てみたい」と思えるようになったのではないでしょうか?

筆者は2.5次元公演を年間40タイトル(同じタイトルを複数回鑑賞するので、回数としては100回少し)ほど観劇するのですが、体感として、昨今は原作ファンと思われる人々の姿を以前より目にするような気がします。従来から、AKB48メンバー等の女性アイドルや元宝塚女優などの出演する舞台では、出演者ファンである男性や年配層の方なども目立ちましたが、昨今ではそういった出演者のいない『ハイキュー』などの舞台でも見かけるのが印象的です。
実際に、「原作のこのシーンの再現が~」「原作からのこの変更が~」など、原作と比較した感想を言い合う声を現場で耳にすることもあります。2.5次元化するからには原作ファンに是非見て欲しい・満足できるものであってほしい、と常々思っている不肖の2.5次元好きの身としては、そうした原作ファンらしき人の姿を見るとひっそり嬉しく思ったりします(好評であればなお嬉しい)。

舞台は、アニメやゲーム、映画などと比べると敷居の高いイメージがあるかも知れませんが、自分の好きな作品の舞台化などキッカケに、ぜひ劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。生の舞台でしか味わえない感動がきっとそこに待っています。

(記事:M.Kobayashi)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。
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(※1)「Fields Yoka Survey 2018」
2017年12月に、全国の小学生~69歳の男女11,642人に対し、余暇に対する行動や、価値観などについて実施したWebアンケート調査。
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