「検索数1位」「昭和レトロ」「おふろcafé」進化する温浴施設
-縮小市場で人を集める戦略とは- 前編

 

一般的な銭湯に、露天風呂、ジャグジーバス、サウナ、レストランやマッサージ室などを加えるなどして、施設の付加価値を高めた「スーパー銭湯」や「健康ランド」といった温浴施設。
そんな温浴施設で、今、新しいコンセプトを加え運営し、業績を伸ばしている施設があります。今回は、人気の温浴施設の集客戦略をレポートします。

■温浴施設のこれまで

1980年代に入浴設備を有した健康ランドが増加したことで市場は拡大し、その後より気軽に立ち寄れ、安価で利用客の回転率が高いスーパー銭湯が増加していきました。1990年代の後半には入浴施設の他にサウナやマッサージ等、美容・健康設備がより充実したスーパー銭湯業態が登場し、市場はさらに成長したと言われています。
2000年代前半には、女性を中心に岩盤浴がブームとなった事で市場が活性化した反面、個別の岩盤専門店が乱立し、利用客の需要流出が見られました。
2000年代半ばには、岩盤浴ブームが落ち着き、市場の成長は鈍化していましたが、2008年に起こったリーマンショックによる景況感の悪化は、温浴施設の市場にも影響を与え、市場は縮小に転じたと言われています。
利用人口で見ても、2010年4,280万人から2016年2,740万人(温泉施設の利用人口推移、レジャー白書より)とジワジワと減少しています。

そんな厳しい市場環境の中で、新しいタイプの温浴施設が誕生し、人気を集めています。

■「美楽温泉 SPA HERBS」

「美楽温泉 SPA HERBS」外観

「美楽温泉 SPA HERBS」浴場

2016年5月に埼玉県さいたま市にオープンしたのが「美楽温泉 SPA HERBS」
ニフティが運営する温浴施設情報専門サイト「@nifty温泉」にて、検索数で2017年夏期スーパー銭湯東日本1位にランキングされている温浴施設です。

運営しているBEST HEARBSの中條聖太氏によると、コンセプトは「上質な癒し 大人だけの高級なSPA」。周辺に競合店が多いため、地域密着型ではなく、幅広い地域を対象にして、“高感度な女性”をターゲットにしたと言います。

関東最大級の広さを誇る岩盤浴施設は幻想的な照明で彩り、「ロウリュウ」(※1)「癒塩(ゆうえん)」(※2) などの多様な設備を揃えました。汗をかいた後のクールダウンの部屋は、ガラス張りの白い部屋で、天井から雪が降ってくる仕組みになっています。また親会社が結婚式場を運営している会社のため、そのコーディネーターにより、細かい内装やインテリアも女性向けにこだわって揃えられました。来店した客が“美しくなる”だけでなく、“非日常を味わえる”“目や耳でも楽しめる”ことを目指していると言います。

(※1)「ロウリュウ」
サウナの本場フィンランド発の高温に熱せられた石にアロマ水を注ぎ、マイナスイオンを含んだ大量の水蒸気を発生させるシステム。

(※2)「癒塩(ゆうえん)」
美肌効果やデトックス効果など、さまざまな健康効果があるといわれている岩塩を天井面に、また純度の高いクリスタル岩塩を壁面に採用。岩盤ベッドを曲線系にすることで体の負担が軽く、まるで宙に寝そべっているかのような独特の浮遊感が味わえる。

クールダウンの部屋

そして2016年12月に入浴料の値下げを行いました。客層が幅広い年齢層や男性にも広がったと言います。同時に、追加料金を出すことで高級感のあるエリアを使える仕組みにしました。これらの施策により、“高感度な女性”客を確保しつつ、一般の幅広い客層も取り込むことに成功しました。男女比率は、通常の温浴施設は男性が70%であるのに対して、女性が55%の割合とのことです。
これらの施策により、前述のランキングにおいて、冬期は7位だったにもかかわらず、わずか半年で、夏期は1位にまで上がりました。

■「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」

「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」外観

埼玉県比企郡で人気を集めている温浴施設が「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」
その名の通り昭和を感じさせるノスタルジックな内装やグッズに溢れています。昔ながらの自動販売機に、映画のポスター、飲み物やお菓子の看板、地元で伐採された木材を活用した「木の図書室」もある。親子3世代が楽しめる癒しの空間になっています。

 

 

 

この「玉川温泉」を運営している会社が、2011年3月に設立された温泉道場です。代表取締役社長の山崎寿樹氏は、前職はコンサルタント会社に勤めていて、観光開発などを担当。その経験を活かし、同社を立ち上げ、当時ほぼ赤字状態だった「玉川温泉」の経営を、居抜きで引き継ぎました。

温泉道場 代表取締役社長 山崎寿樹氏

山崎氏は大の温泉好きで「自分でも、2000か所以上の温浴施設に行きましたが、本当にゆったりできる施設はありませんでした。『自分がゆったりできる施設がほしい』という思いがありました。」と語る。

「玉川温泉」を引き継いだ当時、高齢層の客が目立ち、時間帯も深夜に偏っていました。そこでターゲットを団塊ジュニア世代に定め、ファミリー層を取り込むこととしました。その結果、マーケットリサーチから逆算して、辿り着いたコンセプトが『昭和レトロ』だったと言います。元々設備が古く、リノベーションを行う上で、素材を活かしやすかったとか。
さらに内装を変えるだけでなく、昭和の世界観を体現するために、徹底した従業員への教育を行いました。『昭和レトロ』を根付かせるまでに、3年かかったと言います。
このような施策から、既存の客にファミリー層を融合し、さらに観光客も増えた「玉川温泉」は売り上げを伸ばすことに成功したのです。

「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」浴場

後半では、温泉道場が始めた新しい温浴施設業態を紹介します。

>>後編へ続く

美楽温泉 SPA HERBS
https://spa-herbs.jp/
昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉
http://tamagawa-onsen.com/
温泉道場
http://onsendojo.com/

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています

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