日本のエンターテイメント空間の未来-松本大地氏

FRIでは、各界のトップクリエイターやビジネスプロデューサー、新進気鋭の研究者などをお招きし、その業界の最先端のお話を伺うというセミナーを開催しています。今回は、街づくりのスペシャリストである松本大地さんをお招きし、『日本のエンターテイメント空間の未来』についてご講演を頂きました。本記事は松本さんの講演内容を簡単にまとめたものです。
松本さんは現在、㈱商い創造研究所の代表取締役であり、街づくりから大型商業施設のプロデュースまでを行いながら、欧米のマーケティング調査・研究に基づく執筆活動や、経産省の委員も歴任されています。

■ライフスタイル消費と社会交流消費

2008年12月のリーマンショック以降、消費者のライフスタイル「スペンド・シフト」が急速に進んでいます。ポートランド・ブルックリンなど、アメリカのリベラルな都市を中心に、生活の質を求めるスペンド・シフトの第二ブームメントが起き、一人一人が自分のスタイルを持つようになっています。トレンドに流されるのではなく、過去にはない新しい社会を作っていくという動きが加速しています。
彼らの新しい消費行動(ライフスタイル消費)は、生活の質が向上する充実したライフスタイルづくりをサポートしてくれるお店や商品を求める方向に向かっています。
ライフスタイル消費と併せて、社会に役立つ消費や、地域共生意識からの消費行動(社会交流消費)がこの若者たちの間で敏感になっています。ものの所有よりも、心の満足や体験価値を求め、同じ価値観の人と知り合いたいという交流を求めているのです。
こういった価値観を持つミレニアル世代に共鳴できなければ、未来の業態開発を行うことは難しいと思われます。

■人が集う場づくり

成熟した時代での業態開発のキーワードは、「人が集う場づくり」です。
その手段としては、「リラックス&コミュニケーション」な場所を作ることだと考えています。具体的施設としては、「余所行き感覚の地域コミュニティ」を作った枚方のT-SITEや、福岡志免にあるTSUTAYA BOOK GARAGEの「ご近所感覚のコミュニティ」、函館の蔦屋書店の「コミュニティ~人とのつながり~」というコンセプトが参考になります。
世界一の企画会社を掲げ、カルチュアインフラを作っていくと宣言しているカルチュア・コンビニエンス・クラブは今後も注目していきたいと思っています。

■バルニバービ

「リラックス&コミュニケーション」な場所づくりを考えた時に、大変参考になるのが、バルニバービという会社です。この会社は、1軒のカフェを出店することで街を全部変えてしまうということを度々行っています。それも、ロケーションの悪い場所にあえて出店しながら、「リラックス&コミュニケーション」による人が集う場づくりを成功させ、急成長しています。バッドロケーションに出店することで、賃料を抑えることが出来、自由度も高まるため自分たちの世界を作ることができるのです。閑散した駅や公園、河川、公会堂、大学など、パブリック性の高いスペースを通じて、人と社会をつなぎ、地域の生活の質を向上させるということを担う会社になりました。

■Gathering

「リラックス&コミュニケーション」の空間として最先端のポートランドでは、集い体験に変化が起こっています。例えば、身近なスポーツを新しいGatheringのエンターテイメントの場にしたのが印象的でした。Meetingというのは何かを決めるために集まること、Partyは社交をするために集まることですが、Gatheringというのは、社交的でアットホームな集まりです。具体的には、リラックスしたチェアにワインや料理を用意して楽しむボーリングや、カフェの隣にある卓球ラウンジなどがありました。

■ポスト2020の東京

日本は都市の中で夜間人口が極めて少なく、夜になるとみんなが郊外に帰ってしまいます。このナイトライフの充実が日本の都市では大きなビジネスチャンスになります。
いかに集いをプロデュースできるかが鍵です。日本は夜のアクティビティが無く、スナックやキャバレーなど地下に潜ってしまいますが、そうではなく、食などのテーマを持ったエンターテイメントによって老若男女楽しめるような場所にニーズがあると考えます。

■CSV(Creating Shared Value)

重用なのはCSR(企業の社会的責任)ではなく、CSVになってきていると思います。
CSVとは、直訳すると「共通価値の創造」ですが、企業が追求する経済的価値・利益と、社会的価値を同時に実現することを指します。企業は、儲かっている時にCSR活動をするのではなく、最初から社会に配慮した儲け方をするのが良いと思っています。地域のビジネスリーダーとしてCSVに取り組むことで新たな市場を創出し、製品やサービスに付加価値を生み出すことに繋がっていくと思います。
今までは、「街づくりは人づくり」とか抽象的なことを言いましたが、今は明確なゴールを持って、ビジネスリーダーが動くことが重要だと思います。地域がよくなることによって、自分たちのビジネスも良くなり、住民も良くなり、行政もよくなるのです。
社会課題を解決しながら、「時代をリードする新業態開発」を行い、「“集い”のプロデュース」を両輪にしてやっていくという、この両キーワードが欠かせないものになると思っています。

■セミナーに参加して

普段私たちが何気なく訪れている施設や街が、どういった想いで設計され、どんな可能性を秘めているのか、考える時間になりました。
単に「新しいこと」や「革新的なこと」を目指すだけではなく、地域に貢献し、人々の新しい価値観・ライフスタイルにあったものを提供することが必要という観点は、考えてみれば当たり前かもしれないですが、忘れがちな視点だと思います。ただ、抽象的に・漠然と街づくりを考えるのではなく、まずは人々のニーズを把握するマーケティングを行い、そのニーズに対し親身に寄り添いながら課題を解決することで、利益につなげていくということを考えられれば、個人の生活が満たされると共に、社会全体が充溢していくのだと思います。

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