『スーパー浮世絵 江戸の秘密展』-デジタルアートで江戸が蘇る-

-そもそも浮世絵とは何なのか-
現在、日本橋茅場町の特設会場で開催されているのが『スーパー浮世絵 江戸の秘密展』です。デジタルアート化された浮世絵を通して、江戸の文化を考える展覧会をレポートします。

■“没入感”と“江戸の秘密”

今回展示されている浮世絵は、ボストン美術館で所蔵されている浮世絵の内、2万点を高精細デジタルデータ化したものから選りすぐりした作品です。
仕掛けたのはプロデューサーの鈴木智彦さんとアソビシステム社。単にデジタル化した作品を展示しているだけではないと鈴木さんは語ります。
「まず“没入感”をコンセプトにしました。来場者に浮世絵の中に入ったような感覚になってほしいと思いました。そして“江戸の秘密”と銘打っていますが、今の人にあまり知られていない江戸時代の“リアル”を知ってほしいと思いました。」

プロデューサー 鈴木智彦さん

“没入感”を出すために、浮世絵を最新のデジタル技術で動かし、巨大化し、立体空間として展示されているのです。そんな各展示を紹介します。

■朝の江戸 日本橋-お洒落-イケメン---富士山

エレベーターで上がり、最初に訪れるフロアは「日本橋」です。朝市場が開かれている7時頃の様子だとか。多くの人が行きかい(浮世絵が動く、動く!)、活気に溢れています。当時1800年頃、江戸の人口は120万人に達していました。同時期のパリが約50万人、ロンドンは約90万人ということから、江戸がどれだけ盛況だったかがわかります。

日本橋 五街道により全国から様々な物産が集まり、人が行き交っていた。
歌川広重「東海道五拾三次之内 日本橋朝之景」

浮世絵の片隅で、犬と猫が戯れています。これは不倫して、無理心中したカップルを表しているのだとか。

海運も盛んだった。
葛飾北斎「江戸日本橋」

歌川広重「東都名所 猿若町芝居の図」の加工絵

次に入るのは美人画の部屋です。見事に着飾った女性たちが、ファッションショーのように左右に行き交います。現代の服と違いかなりの重量がありそうです。

美人画①(みんな白い!)

そして江戸時代は庶民が化粧するようになったそうですが、江戸時代は”色白”であることが美人の象徴とされており「鉛白粉」と呼ばれる化粧品がよく使われていたのだとか。

美人画②(やっぱりみんな白い!!)

この「鉛白粉」、実は毒性があり、脳病や神経麻痺を起こす人も多かったとか。まさに女性のお洒落は命がけだったのです。

美人画③(それでもみんな白い!!!)歌川広重「雪中美女」の加工絵

次に来るのが歌舞伎の部屋。歌舞伎役者の看板のコーナーがあり、当時のイケメンの凛々しいこと。
因みに、「2枚目はナンバー2」「女性歌舞伎はセクシーすぎるから禁止になった」といった豆知識も紹介されていました。

歌舞伎 多くの観客で賑わっています。 
歌川広重(初代)「東都名所猿若町芝居」

歌舞伎 舞台の様子 
歌川芳滝

江戸時代のイケメンコーナー

浮世絵の作り方が紹介されているコーナーも。

そして富士山を中心にして、壁一面に広がる江戸湾のフロアへ。葛飾北斎の「冨獄三十六景・神奈川沖浪裏」を実サイズの60倍に拡大して映し出しています。その迫力には圧倒されます。この展示が今回の展覧会のハイライトと言っても良いのではないでしょうか。

部屋一面が、「富嶽三十六景」の世界観に!

波がリアルタイムで変化します!

しばらくいると、激しい波の中を、歌川広重が描いた魚たちが飛び跳ねてきます(凄いコラボですね!)。その後ろから巨大な魚(クジラ!?)が画面を覆い尽くしていきます。
風を感じるほどの風景に、いつまでもそこにいたくなる気持ち良さがあります。

波しぶきが今にもかかってきそうな中を、魚たちが飛び跳ねてきます。

これは…!?

ゴゴゴ…

■夜の江戸…

こうして江戸を巡っていると日が暮れ、夜を迎えます。

夜の江戸を闊歩していたのが、お化けや妖怪、そして幽霊たちです。
日本で一般的に知られている「足がない」「うらめしや~」などの幽霊のイメージは江戸時代に形成されたそうで、浮世絵がそのイメージを大衆に広める役割を果たしたのだとか。

薄暗い空間に発光する屏風絵は、不気味ですが、綺麗です。
歌川国芳「妖怪がしゃどくろと戦う光圀」

葛飾北斎「百物語」

そして最後のフロアがお江戸の花街、吉原の遊郭街です。浮世絵の優美な「花魁」たちに近づくと「フフ」と笑ってくれます。そしてフロアのセンターには、「身請け」つまり遊女を自分の奥さん(または愛人)としてお店から買い取る様子が描かれています。実に雅で華やかな様子が伝わってきます。

花魁(おいらん)※極々まれに小判を撒いてくれることもあるのだとか。

「身請け」の様子

■浮世絵とは…

来場者に感想を聞くことが出来ました。「江戸時代にタイムスリップしたみたいで楽しかったです。」(20代女性)「いつも小さい絵で見ていたので、初めてこんな巨大な浮世絵を見ました。」(60代女性)

江戸の大衆文化を今に伝える浮世絵。江戸時代の人々にとって、そもそも浮世絵とはどういうものだったのでしょうか。前述の鈴木さんによると、現在のゴシップ誌にあたると言います。江戸の庶民にとって、情報を得たり、伝えたりする、メディアであり、エンタテインメントだったのです。
さらに以前『ダ・ヴィンチ・コード』という映画がありましたが、浮世絵には『浮世絵コード』というものが秘められています。
例えば、ある浮世絵を見ると、街の行事の日だというのに、ある家の旦那が吉原の誰のところに行ったというプライバシーな情報がわかってしまう、そんな感じなのです。
こういったコードで浮世絵は溢れています。

※最初の方で紹介した、日本橋の犬と猫の絵も、見方がわかっている人が見ると誰と誰の話なのかも分かるようになっているのです。

昔の文化を現代の人に最新技術を使って再認識させる。そんなデジタルアートの新しい可能性を感じさせる展覧会でした。

『スーパー浮世絵 江戸の秘密展』
https://superukiyoe.com/

同時開催の『食神さまの不思議なレストラン』展
https://tabegamisama.com/

現在、ワークショップも開催中です。
https://nkk-artproject.com/

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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