『僕だけがいない街』の主人公-藤沼悟-特別な能力を持たない彼が魅力的な理由

2016年3月に完結した漫画『僕だけがいない街』は「マンガ大賞」や「このマンガがスゴイ!オトコ編」で3年連続上位にランクインしたほか、「全国3000店の書店員と選んだ“2015 コレ読んで漫画RANKING”」で1位を獲得。さらには2016年にアニメ化と実写映画化を果たし、今年2月には公式外伝も発売されるなど高い人気を誇る作品です。
そんな同作の主人公「藤沼悟」は、“リバイバル”という現象によって何度も時間を巻き戻されている以外は特別な能力を持たない、普通の人です。
それでも悟は非常に魅力的に描かれています。彼の魅力とは、一体何なのでしょうか?

 

画像引用:僕だけがいない街(KADOKAWA)

 

■“普通の人”である悟のヒーロー精神

悟には日頃から、周りにいる人間に危険が迫ると、危険が迫る直前まで時間が戻り、その危険を回避するまで何度も戻される“リバイバル”という現象が起こっていました。
リバイバルは自分の意思で発動できるわけではなく、それ以外は特別な能力を持っていない悟。
それでも悟は危険回避のため、諦めることなく、仲間の協力を仰ぎ、知恵を絞り、自らの危険を顧みずに立ち向かいます。
作中に登場するヒーロー「ワンダーガイ」に憧れ、影響を受けて頑張る悟の姿はヒーローそのものであり、彼を魅力的にしている要素のひとつと言えるでしょう。

■悟のヒーロー精神が魅力的である理由

では悟が「ワンダーガイ」から引き継いだヒーロー精神とは、どのようなものなのでしょうか。彼と似た精神を持つヒーローを調べてみました。
悟のヒーローとしての特徴をFRIのヒーロー分析(※1)の言葉で表すと「最後まであきらめない」「権力や不正に立ち向かう」「仲間との強い絆がある」といった特徴が挙げられます。これを踏まえてヒーローデータベース(※2)で似たヒーローを探してみると「ルフィ(ONE PIECE)」「孫悟空(DRAGON BALL)」「スーパーマン(スーパーマン)」といった、長く愛され続けている王道ヒーローたちの名前が出てきました。
悟の精神は、彼らのような王道ヒーローと同じものだったのです。
一方で、彼ら王道ヒーローたちは特別な能力をもっており、非常にパワフルな印象を受けますが、悟にはそれがありません。
悟は、王道ヒーローの精神を持ちながら、特別な能力を持っていないことで、より身近に感じられる新しい王道ヒーローと言えます。
一見おとなしそうでちょっと頼りない雰囲気の悟が魅力的だったのは、悟の精神が王道ヒーローたちと同じものだったからかもしれません。

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※1「ヒーロー分析」とは、FRIが定量調査に基づいて、ヒーローキャラクターを“6つのヒーロー属性”と“13の性格特徴”で評価する手法です。
※2 「ヒーローデータベース」とは、ヒーロー分析の評価をデータベース化したものです。

(記事:小室 つぐみ)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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