渋谷ストーリー Vol.10 道玄坂

東急本店通り、つまり、今のBUNKAMURA通りから東急本店を望む。どんなに文化を押し出して、名前を新しくしても、この通りが最盛を極めた時代はすでに遠い。しかし私はもう一度ここがシブヤの中心になることより、ひっそりと変わらずに在り続けるほうが望ましいように思う。それでもシブヤは浅草のように懐かしさが支配する街にはならないような気がする。

道玄坂を上り方向に進み、右手に入るとこのような小さな坂道がたくさんある。そしてその先に、ぽっかりと空いた空き地の多くは駐車場だ。日本人はとても車の運転がうまいと思う。ここを進んで駐車して、そこから抜け出るのは、運転技術のテストになるんじゃないだろうか。

町中のシャッターアート。頼んで描かれたものなのか、それとも隙を見た誰かのゲリラアートか。ただ、巧拙は置いておくとしても、お上品な作品よりも、確実に何かを訴えていることがわかる。都市の鬱憤。

道玄坂とBUNKAMURA通りの間に、百軒店(ひゃっけんだな)という店の集合体がある。今では商店街と呼んでいるが何かイメージが違うような気がする。しかし飲食店街とも呼べない何かがある。関東大震災後の復興策として、当時、下町から有名店を誘致して、銀座に出なくても繁華で賑わいのある商店街を作ろうと開発されたと聞く。今では飲食店が軒を並べるが、昔の面影は薄くなってしまった。

百軒店の店舗は多く、シャッターが閉まっているか、飲食店となっている。昼間の百軒店はいまだ覚めぬ夢に眠っている。歩く人はなぜか足早になり、寝顔を見る後ろめたさに顔をうつむける。

道玄坂の登りに向かう右手側は、小さな路地が蜘蛛の巣のように四通八達している。最もにぎわいのある通りでも、ご覧の通りの道幅しかない。しかしこれを狭いとみるのか、居心地のよい、コミュニケーションの空間とみるのか、それは通る人の想いによるのだろう。

(写真:瀬尾 太一)

[ Japacon× FIELDS Research Institute ]

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