アニメ制作会社『サンライズ』の作品作りへのこだわり -後編-

前回から引き続き、サンライズのアニメ制作について、第1スタジオの小形尚弘プロデューサーに興味深いお話をたくさん語っていただきました。

市場のグローバル化とそれによる海外展開を視野にいれつつ、さらに新しい試みを取り入れて作品を制作する必要があるという

――『サンダーボルト』でもメカアクションのクオリティは「さすがサンライズ」の一言です。

やはりサンライズはメカアクションを得意とし、世間では失われつつある“手描きでメカを動かす技術”が大きな武器だという自負もあります。

スタジオ内の制作現場。アニメーターの机が整然と並ぶ

――今後も手描きへのこだわりが?

時代の流れもあり、いつまでもこのままは難しいでしょうね。手描き主体の『サンダーボルト』もコックピットは3Dですし、やはり3Dが有効な部分はあると思います。ただ手描きならではの味も大切ですから、手描きの職人アニメーターがいるうちは続けたいですね。とはいえ、スタッフに3Dのノウハウもたまってきていて、3Dも絶対に良いものができるはずです。

黙々と作画が進められる。デジタル化がめざましい領域だが、手書きならではの質は健在だ

――目標は?

これはシリーズ全般に言えることですが、スタッフの目標は今でも20年以上前の劇場版三部作(※5)。富野監督とキャラクターデザインの安彦さんが作り上げた、あの最高の感触に何とか近づけようと努力しています。ストーリー面も演出面も作画面も、実は『めぐりあい宇宙編』が越えられないハードルになっていて・・・。

※5:ファーストガンダムのテレビシリーズを3本の劇場作品に再編集&新規カット追加したもの。『機動戦士ガンダム』、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』。

――サンライズは海外展開にも積極的ですが、手応えはいかがでしょうか?

欧米圏だと、そもそも巨大ロボット自体が一般的に認知されていない現状です。対照的にアジア圏では認知されつつあり、ガンプラも香港を足がかりにアジアで展開しています。日本のロボットアニメ文化の根付き方は、世界的にみると特異だと思います。

――その理由はどこにあると思いますか?

富野監督いわく、宗教的な背景が理由のひとつになっているんじゃないかと。仏教は大きいものに対する偶像崇拝があるので巨大ロボットに憧れを抱く。一方で、キリスト教は肉体に対する信仰が強くて、スパイダーマンなど人間の延長線上にあるものに憧れますよね。

――それは興味深いですね。ではロボット以外の作品はいかがですか?

『犬夜叉』(※6)は和の世界観が受けましたし、『TIGER & BUNNY』や『カウボーイビバップ』(※7)は「かっこいい」という世界共通の概念が受け入れられる秘訣になっていると思います。

※6:戦国時代を舞台にした、伝奇の要素も多いファンタジー作品。
※7:クールなセリフや音楽、映像が特徴的なSF作品。

40年以上の歴史を誇り、それにより積み上げてきた各種の資料が制作の土台になっているという

――まさにグローバル化ですね。

日本国内だけの展開はもう時代遅れです。パッケージビジネスが縮小している現状では、海外含めた展開がマストになっています。『機動戦士ガンダムUC』も海外を視野に入れた戦略的なアイテムで、最初から吹き替え版や多言語対応版を作り、アジア圏は日本と同じようにイベント上映も行いました。

――『サンダーボルト』は15分1話のセル型配信(のちに全4話+αのイベント上映を開催)でした。そうなった経緯をお聞かせいただけますか?

15分で区切ったのは、視聴者の視聴環境が多様化しているなかで大勢に楽しんでもらうための1つの考え方です。15分なら電車内でもスマホで楽しめるし、しっかりと満足もできますから。また、制作的には尺が短い分、1カット1カットにより手をかけられるのも大きいです。ビジネス的にも売るチャンスが4回生まれるなど、いろいろとメリットがあります。

――最近のアニメは劇場でのイベント上映を軸にした展開が好評ですね。

テレビシリーズだと忙しくて視聴を続けるのが難しい人もいます。でも、年数回のイベント上映という形ならお祭り感覚で劇場に集まっていただけます。盛り上がりなどを皆と同じ空間で共有したいという流れは、今後もライブ含め続いていくスタイルだと考えています。ただ、我々もまだ試行錯誤している途中なので、今後は時代に合わせて形は変化していくと思います。

――最後に、今後の展望と想いをお聞かせください。

40年のノウハウ、作品の積み重ね。サンライズならしっかりとしたものを新しいチャレンジとして作らせてもらえる、世の中のクリエイターたちにそう思っていただける環境を提供し続けたいです。その上で新しい才能を活かしていければと。これからも伝統とチャレンジの両方を大切にしていきます。

――ありがとうございました。

お話を伺った小形尚弘氏。『機動戦士ガンダムUC』や『機動戦士ガンダム サンダーボルト』、『犬夜叉』シリーズなどを手がける、現在のサンライズを代表するプロデューサーのひとりだ

 

いかがでしたか? 伝統の上にあぐらをかくことなく、常に新しいものを見出そうとするサンライズのスピリットがよく伝わってきますね。次の新作にも大いに期待しましょう!

「機動戦士ガンダム サンダーボルト」第2シーズン

3月24日(金)正午 有料配信中
http://gundam-tb.net/

>>FRI’s eye:アニメ制作会社『サンライズ』の作品作りへのこだわり -前編-

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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