小さなテーマパーク「プリントシール機」Part3.~”盛る”の最新事情を覗く~

女子高生を中心に若い世代の女性のコミュニケーションツールとして欠かせないプリントシール機(以後、プリ機)。そのプリ機のトップシェアを占めるフリューの成長への戦略をレポートします。

■フリューの挑戦

現在、プリ機の市場は約225億円辺りで横ばい安定状態が続いている。そのプリ機の最大手が、渋谷区に本社オフィスを構えるフリュー株式会社だ。

フリューオフィス

フリューオフィス内プレスルーム

「GIRLS’TREND 研究所」所長 稲垣涼子さん

元々は1997年オムロン株式会社の新規事業としてスタートした。プリ機市場に参入したのは98年、最後発メーカーの一つだという。当時プリ機は大流行中で競合がひしめきあっている状態。そんな中フリューは1つ目の商品として、他社にはない技術力を強みとした似顔絵シール機を発売した。ところがこれが全くヒットせず。挫折経験から、マーケティングの大切さを知り、プリントシール機として立て直し、ユーザーに支持される機種を生み出せるようになった。

そして転機となったのが2006年、現「GIRLS’TREND 研究所」所長 稲垣さんが企画リーダーとして作った機種『姫と小悪魔』の大ヒットである。それまでのプリ機はカスタマイズが自由になっており、ユーザー任せだった。ところが中にはメイクや服の雰囲気に合わない背景を選んだりして、仕上がりがゴチャゴチャになっている人がいた。そこでこの機種では、例えば「姫パステル」というコースを選ぶと、背景から加工までコンテンツの色味がパステルに統一されるといったようになり、自由にカスタマイズできるようでありながら、実はその人が好むメイクや服の系統に合わせた背景や加工などを選べるように筋道を作った。つまりあまりセンスのない人でも「盛れてる」画像が作れるように“センスを足した”のだ。これ以降、プリ機事業が軌道に乗る中、会社そのものは2007年、フリュー株式会社としてオムロンからMBO(マネジメントバイアウト)にて独立した。

2006年『姫と小悪魔』

『姫と小悪魔』画像

また2002年、「楽プリショット」(現:「ピクトリンク」)というプリントシール画像(以下、プリ画)の取得・閲覧サービスを開始。プリ機で画像を撮った場合、無料会員は選んだ画像1枚のみがもらえるが、有料会員になると、撮影した全ての画像データがスマホで取得できる。新機種の『winc(ウィンク)』では撮影画像をコラージュしてちょこちょこ動く「プリちょこ動画」ももらえる。当然、会員になればフリューのプリ機を選ぶようになる。

『winc(ウィンク)』の「プリちょこ動画」

■「GIRLS’TREND 研究所」を開設!

さらに2012年に「GIRLS’TREND 研究所」を開設。プリントシール機の企画開発のために徹底的に行ってきた、若年女性に対するマーケティング調査をさらに強化し、社外に対しても情報発信を行うなど、新たな展開を行っている。稲垣さんによれば、「グループインタビューをはじめ、ユーザーと接する時間を頻繁に作り、『何を考えているか』『どういうものをかわいいと思うか』などを、“知る”だけではなく、心の中では“女の子になりきれる”状態を作っています。」と言う。これは言葉で言うほど簡単なことではない。例えば、プリ機を撮る理由を「自己満足」という女の子がいる。そんな子でも、どこかで「他人に評価してもらいたい」という気持ちがあったりする。そういう言葉の裏を読めるようにならなければいけないと言う。

さらに「プリ機の“盛り”は流行を読み取ってから提案するのでは遅く、常に、若い女性の“今”にシンクロすることが大事です。」と語る。そのためにメーカーによっては、年1回の新機種導入に留まるところもある中、フリューでは、既存機種のバージョンアップ機も含め、年9回の新機種導入を行っている。若年女性のことを把握して、次々に新しい提案を行うことで、変化の速い流行とマッチングするよう対応しているのだ。

こうしてシェアを着実に伸ばし、現在プリ機の設置台数シェアは70%を占めている。

日々、“ガールズ”の研究を続けている

■スマホ写真アプリとの共存

現在、スマホでも写真を華やかに加工できる様々なアプリが存在する。そういった写真アプリと競合しないのか、その辺りの疑問をぶつけてみた。

稲垣さんによれば、「その状況を歓迎しています。」と語る。写真アプリの普及により、これまで以上に“写真を撮る”という習慣が多くの人に根付いてきた。“より良い写真を撮ろう”という欲求に繋がっている。
※※少し話がそれるが、以前は夜遊びをすることがリア充の証といった時代もあったが、SNSでシェアすることが目的にもなっている今、写真を魅力的に撮影しにくい「夜遊び」は少し下火。写真映えする、昼のバーベキューや、ホームパーティ、朝活などといった「健康的な」遊びが人気となっている。※※
そして「盛る」機能においては、やはりプリ機の方が勝る。手軽に盛りたい時はスマホで、しっかり盛りたい時はプリ機で、そんな使い分けが生まれている。

■これからの「盛る」

稲垣さんの分析によれば、しばらくは「ナチュラル盛り」の流れが続くと考えているそうだ。その中で多様化が進み、「クールな」「健康的な」「自分らしさ」といったワードがポイントになってくると見ている。
またユーザー年齢層も少しずつ上に広がっていると言う。

さらに「盛る」は画像の中だけに留まらない。フリュー「GIRLS’TREND 研究所」では株式会社大創産業とコラボし、若い女性向けの雑貨を中心としたグッズを販売中。長年培ってきたマーケティング力を活かし、リアルな「盛る」にも展開を広げているのだ。「GIRLS’TREND 研究所」は『すべてのGIRLSをHAPPYに』をコンセプトにしている、と稲垣さんは語る。

“フリュー「GIRLS’TREND 研究所」×ダイソー”のコラボ第3弾グッズ

■エピローグ

プリ機の歴史、「盛る」の変遷は、若い女性の文化の移り変わりそのものだ。とても短いサイクルで変化を続ける若い女性のニーズをつかみ続けるフリューの強みは、そこに特化して注視し続けた研究と企画力そしてそれを実現する技術力のなせる技だと感じた。

そして最も印象に残ったことをもう一度言わせてほしい、年齢もずいぶん違うのに、最新のプリ機を体験して感じたことだ、
「実に楽しい、“小さなテーマパーク”がそこにある!」。

フリュー株式会社HP
http://www.furyu.jp/

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(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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