小さなテーマパーク「プリントシール機」Part1. ~”盛る”の最新事情を覗く~

-パネルに表示された画像からお気に入りを選ぶ。この時点でびっくりするぐらい綺麗に…、というかカワイく撮れている-
女子高生を中心に若い世代の女性に確固とした市場を築いているプリントシール機(以後、プリ機)。日々、進化と変化を遂げています。今回は小さなテーマパークとも言えるプリ機の最新事情と共に、“盛る”の文化をレポートします。

『winc(ウィンク)』画像

■『winc(ウィンク)』-抜け感-を体験!

先日、2月10日から12日まで幕張メッセで開催された「ジャパンアミューズメントエキスポ2017」。その一角に展示されていたのが『winc』ブース。フリュー株式会社(以下、フリュー)が今月中旬に発売する新型プリ機だ。新しい機能を体験しようと女性を中心に多くのユーザーが列をなしていた。

『winc(ウィンク)』ブース(フリュー)

筆者も10年以上ぶりぐらいだろうか、かなり久しぶりにプリ機を体験してみた。まず入ってみて最初に思うのは「広い、大きい!」。プリ機が最初に登場したのが1995年頃と言われる。フリューの「GIRLS’TREND(ガールズトレンド) 研究所」 所長 稲垣さんによると「今のプリ機は、広さが1.7メートル×3メートルくらいあって、高さが2.2メートルくらい、初期のプリ機の約10倍の体積があります。ちなみに価格は3倍。」とのことだ。
内装も清潔感がある。

フリュー「GIRLS’TREND 研究所」所長 稲垣涼子さん 隣にあるのが『winc』筐体

撮影ブースに入る(被写体はフリュースタッフの方)

撮影ブースの中はこんな感じ

次に顔の位置を確認して画像を撮る。カメラは少し斜め上にある。真正面から撮るカメラに比べて、あごのラインがスッキリと写るそうだ。そしてフラッシュが焚かれるが、前、後、そしてサイドといわゆる3点照明に加えて、顔の斜め下から煽りの照明もある。至れり尽くせりの照明だ。
写真を数枚撮ると、ブースを出て画像を加工するための「らくがきブース」と呼ばれるスペースに移動する。撮影エリアで完結しない構成により、設置店舗の運営側としては回転率を上げられる。また、ユーザーに対しては移動感を出すことで楽しさを演出しているという。確かにワクワク感がある。いわゆる接客フローの工夫だ。

パネルに表示された仕上がりイメージを見ながら、目や顔の大きさ・明るさなどを自分好みに調節。もちろん筆者も撮ってみたが、この時点でびっくりするぐらい綺麗に…、というかカワイく(!?)撮れている(因みに筆者は男性です)。そこにアレンジを加えるのだが、このアレンジが実に多種多様だ。目の雰囲気からリップの色選び、そして帽子や動物の耳を付けたり、メッセージの書き込みなどができる。
完成するまで5分から10分ぐらいだろうか。色々できることがあって、実に楽しい。“小さなテーマパーク”と呼ぶに相応しい気がする。

目の雰囲気を選んでいる

画像に文字などを書き込む

プリントシールの出来上がり

メイクのトーンは現在の時流に合わせてある。『winc(ウィンク)』のテーマは“抜け感”だ。”抜け感”とは、きちんと整っていながらも、適度に力が抜けた自然なおしゃれさだという。髪の毛はサラッとラフ感を出し、肌はパウダー肌、瞳は丸いキャッチライトで潤い感を出し、チークは粉チークのようなぽっと色づく血色感を出している。

稲垣さんによれば、こういった“抜け感”を出すために、開発にはかなりの苦労があったと言う。特にチークを“塗った”感じでなく、“ほんのり色づいている”感じ、血の通っている感じを出すのが難しかったとか。さらに撮った写真をSNSでやり取りするユーザーが多いため、重くなりすぎないようにデータ容量を軽くすることなどにも気を使うと言う。

こうして出来上がったプリ機写真は、本人にかなり+αされた感じの仕上がりとなる。この+αが「盛る」という行為だ。

普通の写真とプリ機の比較

『winc(ウィンク)』の完成画像

■プリ機のキーワード:「盛る」「盛れてる」「盛れる」

デジタル時代の若い女性にとって、「盛る」は日常的な行為だ。女の子たちがメイクをしたり、プリ機で撮影したり、スマートフォンのアプリで加工したりして、外見を実際よりも良くする“行動”を「盛る」と言う。「加工する」に近い言葉だ。メイクが“リアル盛り”に対して、プリ機などは“バーチャル盛り”となる。綺麗というより、自分の好みに合った、トレンドに乗ったカワイイを目指すと言う。
そして、理想的に加工できた“状態”を「盛れてる」と言う。女の子たちが、最高に写真写りの良い自分と感じられる=自分が自分であると認識できるギリギリのところが、「盛れてる」状態だ。別人と感じられたり、自分らしくないと感じられると、やりすぎである「盛れていない」と表現される。
さらに理想的に加工できるプリ機を「盛れるプリ機」と呼ぶ。

整理すると、若い女性は「盛る」という行為によって、「盛れてる」状態を目指している。その手段の一つとして、「盛れるプリ機」を求めているのだ。

そして女性たちは「盛れてる」プリ画を、見せ合ったり、SNSで交換し合ったりする。作っては見せ、刺激を受けてさらに作る。そういう循環が起こっている。プリ機は彼女たちのコミュニケーションツールとなっているのだ。

「盛れてる」プリ画を持っているということは、トレンドを捉えている証ともなる。彼女たちにとって、「盛れてる」とは努力の評価指標になるのだと前述の稲垣さんは語る。

因みに、「GIRLS’TREND 研究所」で行っている東京大学との共同研究の調べでは、最初に「盛る」という言葉を使ったのは、雑誌『Ranzuki』(ぶんか社)の2003年11月号「プリ特集」ではないか、とのこと。さらにその語源は「話を盛る」から来ていると分析している。

こういった「盛る」にも時代の流行があります。次回はプリ機のトレンドの変遷を紹介します。

フリュー株式会社HP
http://www.furyu.jp/

>>Part 2

>>Part 3

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です