アイアムアヒーローの主人公、鈴木英雄。
一見”ダメ”すぎる彼に、それでも感じる不思議な魅力

 

「こんなに魅力のない主人公がいるのだろうか?」最初に『アイアムアヒーロー』を読み始めた時、主人公の鈴木 英雄についての印象です。
当作品は2009年に連載が始まり、遂に先週の発売号で完結を迎えました。
鈴木英雄は35歳のさえない漫画家で、出版社には相手にされない、劣等感に浸る毎日を過ごしています。そんなある日、謎の感染症のパンデミックが起こり、日常は崩壊していきます。ZQNと呼ばれる非常に身体能力の高い感染者で街は溢れ、次々と人々が襲われる中、鈴木英雄もとんでもないサバイバルを余儀なくされます。唯一の救いはクレー射撃を趣味としていたことぐらいでしょうか。
逃走の旅の途中、比呂美やつぐみをはじめ、様々な人物と出会いと別れを繰り返していきます。
鈴木英雄の性格は「弱気」で「器が小さく」、非常時においても変に自分のルールにこだわるなど、読んでいて本当に面倒くさい奴だと何度も思いました。物語の面白さに引き付けられ、読み続けたものの、主人公に魅力を感じたのは皆無に近いかもしれません。ただ、「最後まであきらめないタフさ」だけは凄いものがありました。何度も「助かるわけがない」と思える状況から、生き延びていきます。

当社のヒーローデータベースに照らすと、『新世紀エヴァンゲリオン』のシンジ、『ONE PIECE』のウソップが出てきました。苦悩しながら戦い続けるところはシンジに繋がるものがあるかもしれません。さらに『なでしこJAPAN』も上位に出てきました。なんか勝ち進んでいると話題になり、テレビで観戦した’11年W杯の決勝 米国戦。パワー、スピード、技術、あらゆる面で優っている米国チームを見て、「勝てるわけがない」、見ている側がそう思ったにもかかわらず、「折れない心」でなでしこは優勝を遂げ、日本中のヒーローとなりました。思いがけない状況の中で、予想を超えたとき、ヒーローは生まれるものだと思います。

(注)ネタバレがあります。

『アイアムアヒーロー』の最終章は、誰もいなくなった東京で独り生きていこうとする鈴木英雄の姿で終わります。様々な謎を残したままの終焉に、ネットではかなりの批判がありましたが、この最終章のモチーフこそが作者が描きたかったものでしょう。漫画家の時も、サバイバルの旅の途中も、最終章も、人生をあきらめないヒーローがそこにいます。全く魅力を感じなかった主人公なのに、最終回を迎えたときはとても残念に思いました。
そんな読者の思いを代弁するかのように、作品の最後はこう結んでいます、
「さようなら、英雄」。

http://spi-net.jp/weekly/comic002.html

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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