「日本eスポーツリーグ 」決勝レポート -そこにある課題と未来- 後編

-今年1月の上旬、原宿を歩いていた。薄曇りだが日は射していた。向かう先の事務所へ到着すると…、「おッ」少し驚いた。雰囲気が変わっていたのだ-
先日1月22日「日本eスポーツリーグ 2016 winter」の決勝大会が開催されました。白熱の決勝の模様、そして日本のeスポーツの現状と未来についてのレポート、後編をお送りします。

日本eスポーツリーグ 決勝大会

■日本eスポーツの課題

昨年からマスコミなどで取り上げられ盛り上がりを見せる日本のeスポーツだが、まだまだ「黎明期」。競技団体も複数存在し、eスポーツの競技人口はまだ多いとは言えない。

そして特に大きな問題となっているのが法律面だと日本eスポーツ協会事務局長の筧誠一郎氏は言う。「日本では様々な制約から海外で行われているような高額賞金の大会を開催することができずにいます。例えば、プレイヤーからお金を集めてそれを賞金にすると刑法の賭博罪に引っかかる可能性があります。ゲームソフトの販促利用とみなされると、景品表示法の制約から『元商品の取引価額の20倍』までしか賞金にできません。」
他にも、かつて格闘ゲームが盛んに行われていたゲームセンターにも風営法という縛りがあり、店内で賞金大会などが開けないことも影響があるという。

さらに日本はスマホゲームが盛んだが、アイテム課金が主流。そのため“課金する人ほど強くなる”という仕組みが、日本のゲームレベルに少なからず影響を与えていると言う。海外のゲームの主流は、キャラクターの装飾などのアイテム課金はあっても、強くなるためには純粋にプレイヤーの腕を上達させるしかないのだ。

また選手の人生設計の課題もある。海外でもプレイヤーの年齢は20代後半までが中心で、選手寿命は短い。現役を退いた選手の行く先も考えていかなくてはならない。
収入も、世界で活躍している一部の有名プレイヤーを除けば、所属する組織も新しく、安定しているとは言い難い。

しかしそういった課題を克服していくのが協会の仕事と筧氏は語った。

■決勝の行方 3回戦『オーバーウォッチ』

CYCLOPS OSAKA athlete gaming『オーバーウォッチ』チーム

東京ヴェルディ『オーバーウォッチ』チーム

『オーバーウォッチ』(※1)は幾つものマップを舞台に、1チーム6人で対戦する。マップごとに、どういうルートを通るか、どのキャラクターを選ぶかで様々な選択肢があり、緻密な戦略が必要とされる。その上で、敵と戦うアクションゲームとしての技術も必要となる。

予選リーグのリベンジを期して臨んだ「CYCLOPS OSAKA athlete gaming」(以下:大阪)だが、1ゲーム目は「東京ヴェルディ」(以下:東京)が圧倒して勝利する。1ゲーム目終了後、大阪のリーダーがヘッドフォンを取り、全員に「もっと声を出せ!」と激しい口調で気合を入れていた。その様はスポーツそのものだ。

2ゲーム目は一進一退の白熱した展開となった。大阪が意地を見せたが、紙一重で東京が勝利を手にした。筆者もゲーム好きだが、対人ゲームの場合、勝てそうなのにどうしても勝てない相手とぶつかる時がある。紙一重の差に感じられるが、その差を埋めるのはとても難しいものだ。
3ゲーム目もその勢いで東京が勝利し、3-0で東京が『オーバーウォッチ』を制した。

約4時間に及んだ「日本eスポーツリーグ 」決勝大会は、『FIFA17』と『BLAZBLUE CENTRALFICTION』の2種目を制した「CYCLOPS OSAKA athlete gaming」が総合優勝となり、初代王者として名を刻んだ。
「東京ヴェルディ」も『オーバーウォッチ』リーグ最強の威厳を守った。

優勝したCYCLOPS OSAKA athlete gaming

表彰式の様子(左が筧誠一郎氏)

東京『オーバーウォッチ』チームのリーダーVader選手に、どうしてこの種目を選んだのか聞くと、FPSの中で日本でも人気があること、そして昨年登場したばかりのゲームで世界との差があまりないと考えたからだという。
リーグ無敵の「東京ヴェルディ」だが、インターネットで中国や韓国のチームによく練習試合を申し込んでいるのだとか。「なかなか勝てない。」とVader選手、その度に世界との差を感じるという。
しかしその壁を越え、いずれ世界で活躍したいと力強く決意を語った。

次回大会「日本eスポーツリーグ 2017 summer」は今年5月から開催される。参加チームも増えるとのことだ。日本のeスポーツのこれからを期待して見守りたい。

■年明けのある日…

決勝大会を終え、会場を後にしながら、筆者は年明けのある日を思い出していた。
1月の上旬、原宿にある前述の筧氏の事務所に新年の挨拶に向かっていた。少し寒さはあるものの、薄曇りだが日は射していて、気持ちのいい風が吹いていた。
1年ぶりぐらいの訪問だったが、事務所に入るなり少し驚いた。正確な人数は言えないが、人数がグッと増えていたのだ。しかも以前は落ち着いた感じの事務所だったが、慌ただしく活気がある。
そのザワついた雰囲気は、何か新しいことが始まろうとしている予感に満ちていた…
雲はある。だが いい風が吹いている。

日本eスポーツリーグ
http://jesleague.jp/

(※1) オーバーウォッチ
http://www.jp.square-enix.com/overwatch/

>>前編はこちら

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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