「日本eスポーツリーグ 」決勝レポート 前編

-1日のチーム練習8時間、その後、個人練習が数時間。中にはリアルのサッカー選手を目指してデジタルのサッカー選手になったものもいる。待っているのは世界の大舞台。彼らはプロのeスポーツ選手だ-
先日1月22日「日本eスポーツリーグ 2016 winter」の決勝大会が開催されました。白熱の決勝の模様、そして日本のeスポーツの現状と未来についてレポートします。

日本eスポーツリーグ 決勝大会

■世界で拡大する「eスポーツ」

「eスポーツ」とはコンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称だ。欧米や中国・韓国ではとても盛んだ。

日本eスポーツ協会事務局長の筧誠一郎氏によると、中心となっているジャンルはFPS(一人称視点のシューティング)やMOBA(複数人が2チームに分かれ、それぞれのプレイヤーがリアルタイムでキャラクターを操作して戦うゲーム)で、そのほか格闘ゲームなども人気だ。FPSでは『CALL OF DUTY』(※1)など、MOBAでは『League of Legends』(※2)が代表的な作品だ。いずれも世界中に数多くのプレイヤーを擁している。そんなeスポーツにおける世界の競技人口の総数は最低でも1億人を超えるという。

ちなみに、一般的なスポーツで見るとサッカーの競技人口が2億6,500万人以上、バスケットボールが約4億人と言われており、eスポーツが人気スポーツに引けをとならない規模にまで拡大していることがわかる。

さらに、「League of Legends World Championship」の2014年大会決勝のオンライン視聴者数が1,120万人。これはアメリカ最大のスポーツイベント、スーパーボウル(プロアメリカンフットボールの優勝決定戦)の配信数をしのいでおり、eスポーツとオンライン配信の相性が良いことの事例だと筧氏は語る。

市場規模は400億~500億円ほどと言われているが、賞金総額が20億円を超える大会も開催されており、アイテム課金や広告収入などを入れると、実際の市場規模はもっと大きいのではと筧氏は推測する。

そんな世界的な広がりを見せるeスポーツだが、日本ではイベントや組織的な取り組みが始まったばかりだ。

■日本の「eスポーツ」が始まる!

初めての大会となる「日本eスポーツリーグ 」は昨年11月に開幕、全国から6チームが総当たりのリーグ戦に挑んだ(参加した地域は、北海道、東京、愛知、福岡、大阪2チーム)。リーグ戦はインターネットで各地を結んで週1回行われたが、結果、1位の「CYCLOPS OSAKA athlete gaming」(以下:大阪)と2位の「東京ヴェルディ」(以下:東京)の上位2チームが決勝戦へと駒を進めた。

1位の大阪は「eスポーツコネクト」(東京・渋谷区)が運営し、大阪市に本拠地を置く完全プロチーム。
2位の東京はサッカーJ2のクラブが運営しているチームで、別の仕事もしている兼業の選手と専業の選手が混在しているチームだ。
いずれも1日のチーム練習8時間、その後、個人練習が数時間というハードワークをこなして、決勝を目指してきた。

決勝の会場となったのは東京・江戸川区の「東京アニメ・声優専門学校」。日本で唯一eスポーツ業界で働くことを目指す人材を育成する学科を持っている学校だ。

東京アニメ・声優専門学校

実況の様子 この日はネット配信が行われた

対戦は3種目、サッカーゲーム『FIFA17』(※3)、格闘ゲーム『BLAZBLUE CENTRALFICTION』(※4)、FPS『オーバーウォッチ』(※5)で行われる。
2種目を制したチームが栄冠に輝く。

■1回戦『FIFA17』

サッカーゲーム『FIFA17』は、ホーム&アウェイ方式の2試合の合計得点によって勝敗を決定する。プレーするチームとして、大阪 黒豆選手は「バイエルン・ミュンヘン」、東京 KEN選手は「レアル・マドリード」を選んだ。
1試合目、KEN選手が先制したが、終了間際に黒豆選手が同点に追いつき、その後、点を重ね逆転で制した。2試合目も黒豆選手が、守備の要の選手を怪我で欠いてしまうという不運に見舞われながらも、粘り強い攻撃で勝利。大阪チームに1勝目をもたらした。

黒豆選手は学生時代、リアルなサッカーをやっていたと言う。ただポジションがキーパーだったため、得点を奪う選手たちが羨ましかった。そこでデジタルのサッカーを始めた。練習しているうちに強くなり、気が付いたらサッカーのプロゲーマーになっていた。
「戦略において、リアルでもデジタルでも相互に参考になる。」と黒豆選手は語る。

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試合の合間、観戦していた10代の若者に話を聞くことができた。彼は高校で普通大学への進学を目指していたが、“やはり自分はプロゲーマーになりたい”と一念発起、現在は専門学校を目指して浪人中だと言う。eスポーツを日本でメジャーにするような選手になりたいと将来の夢を語ってくれた。
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■2回戦『BLAZBLUE CENTRALFICTION』

『BLAZBLUE CENTRALFICTION』は2Dの格闘ゲーム。10ゲームを取った方が勝ちとなる。大阪のどぐら選手が怒涛の先制で6-2と大きくリード。その後、東京のソウジ選手が追い上げを見せたが、どぐら選手が10-7で圧倒し勝利した。

この時点で大阪が2種目を制し優勝が決まった。

■3回戦『オーバーウォッチ』

『オーバーウォッチ』は昨年発売されたばかりのゲームだが、その高い戦略性から人気を博し、全世界のプレイヤー数は2,000万人と発表されている。1チーム6人で対戦するFPSゲームだ。
本大会は3ゲーム取ると勝利となるルール。
通常なら優勝が決まり、消化試合と思われる3回戦。ところがそうではなかった。
東京チームは、予選リーグで1ゲームも落としておらず、自他共に認めるリーグの最強チーム。大阪チームは打倒東京を目指して、練習を積んできた。
会場にこれまで以上の緊張感が漂った。
両チーム共、選手6人が円陣を組んで気合を入れていたのが印象的だった。

円陣を組む東京ヴェルディ『オーバーウォッチ』チーム

円陣を組むCYCLOPS OSAKA athlete gaming『オーバーウォッチ』チーム

東京『オーバーウォッチ』チームのリーダーVader選手に話を聞くことができた。
Vader選手は16歳でPCゲームの大会に出るようになり、19歳で世界大会に出場するまでになった。その時、海外選手の“凄さ”を肌で感じ、本気でプロゲーマーを目指すようになった。その後、ゲーム会社に勤めながらプレイを続け、昨年11月、会社を辞めプロとなった。
生活について尋ねると「不安はある。」と率直に語ってくれた。

盛り上がりを見せているとは言え、日本のeスポーツは「黎明期」。まだまだ様々な課題がある…

後編は日本のeスポーツの課題、そして決勝の行方をご紹介します。

日本eスポーツリーグ
http://jesleague.jp/

(※1) CALL OF DUTY
https://www.callofduty.com/ja/infinitewarfare

(※2) League of Legends
http://jp.leagueoflegends.com/

(※3) FIFA17
https://www.easports.com/jp/fifa

(※4) BLAZBLUE CENTRALFICTION
http://www.blazblue.jp/cf/

(※5) オーバーウォッチ
http://www.jp.square-enix.com/overwatch/

>>後編へ続く

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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