女子と渋谷の展覧会from シブカル祭。―渋谷をアートする― 後編

渋谷は<積層する>街であり、<描いている>街であり、<セルフィ(自撮り)>の街でもある。そんないくつもの側面を持つ「渋谷ストリート」テーマにしたアート展『女子と渋谷の展覧会from シブカル祭。』レポートの後編をお届けします。

『女子と渋谷の展覧会from シブカル祭。』

■『UMMMI.のロンリーガール』

『UMMMI.のロンリーガール』(作:UMMMI.)

UMMMI.さんの視点は他の人と少し異なっている。テーマは「ロンリーガール」だ。作品は、アパートから渋谷駅まで、酔っぱらった女の子を運ぶ映像が壁に映し出されている。その前におぼろげな光を放つ「LONELY GIRL」という店の看板が置かれている。看板の周りは一人暮らしの部屋のように雑多なものが散らかっている。横にはタブレットが置かれていて、ブログが書き込まれている。
UMMMI.さんは1997年ECDの『ECDのロンリーガール』、2005年加藤ミリヤの『ディア ロンリーガール』にインスパイアされ、「ロンリーガール」に興味を持った。「たくさん恋人がいても、或いはたくさん恋人がいるからこそ、ロンリーガールな人もいる。世の中には多種多様なロンリーガールがいる。」
そんなUMMMI.さんは2016年の渋谷にいるロンリーガールを見つけることを今回のテーマにしたという。見つけると、その内容はブログに更新される。開催期間中、毎日更新すると言う。

渋谷は<ロンリーガールをも受け入れてくれる>街と言えるかもしれない。

UMMMI.さん

■『©TOKYO号外 渋谷ランド』

『©TOKYO号外 渋谷ランド』(作:オカダキサラ)

オカダキサラさんは、常にカメラを持ち歩いては、いろんな街でスナップ写真を撮るフォトグラファーだ。日常の中で、目の前の光景や出来事、人物など絵になる一瞬を撮り続けている。今回の作品も、渋谷の街を歩き続けて撮った作品群だ。
実はオカダさんは、渋谷が苦手で普段あまり来ないという。それはオカダさんにとって、渋谷が<距離の取りにくい曖昧な>街だからだと言う。写真を撮る上では距離感がとても大切だ。しかし渋谷は人の多さや、地形や、人種の多様さなど、いろんな理由で撮りにくい。
「以前は渋谷に来ても、雑然としていて、シーンをつなぐことが出来ず、何も撮れずに1日が終わることが多かった。」と言う。オカダさんにとって渋谷は“まるで異国の地”だとか。だからタイトルも「渋谷ランド(渋谷国)」と付けた。

しかし今回は懸命に撮り続けた。目まぐるしさに圧倒されながら、挫けないように撮り続けた結果、出来上がった作品は、どれも“渋谷で生きている人々”が写った一枚一枚になっている。そして全体で渋谷を表している。時々、顔が画角から外れた作品があるが、渋谷の曖昧さを表現したかったという。
そんな写真の中でもオカダさんのお気に入りがこの一枚だ。「バックミラーの鏡を含め、4人の人物が同時に写っていて、どの表情もイキイキしている。」

オカダさんは渋谷について、別の見方も持っていた。皆が自分の役割を認識していて、ファッションや立ち振る舞いを区別している。それは他人に対してもそうだ。オカダさんは渋谷の街を歩いていてキャッチにあったことが一度もないのだとか。「たぶん渋谷の人には、私は外国人に見えているのだろう。」と言う。
渋谷は<フィルタリングする>街なのだ。

オカダキサラさん

■エピローグ

今回の作品に共通していることは、渋谷を表現しようとして、どれも立体的な表現になっているということでした。展覧会を通じて、筆者の感じる渋谷は、その地形からして谷底で、周囲からいろんなものが流れ込んでいる<吹き溜まり>です。ファッション、カルチャー、サブカル、音楽、映像、漫画、人種、思想、嗜好、年齢、性別、ありとあらゆるものが吹き溜まって、常に流れている――。それはやがて吹き上がり、メディアとなって周囲に拡散されていく――。そんな街ではないでしょうか。もちろん、それとて渋谷のほんの一面に過ぎません。

『女子と渋谷の展覧会from シブカル祭。』はコンパクトなスペースながら、豊かな感性に満ちた作品が揃えられた素敵な展覧会でした。女性アーティストたちのこれからの活躍を期待せずにはいられません。

『女子と渋谷の展覧会from シブカル祭。』
http://www.parco-art.com/web/gallery-x/exhibition.php?id=1030

>>前編はこちら

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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