ゲームマーケット2016秋 -アナログゲームがジワジワ来てる-

先日12月11日、アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2016秋」が東京ビッグサイトで開催された。愛好家を増やし続けているアナログゲームの魅力と人気の背景をレポートします。

「ゲームマーケット2016秋」

■大盛況のアナログゲームイベント

「ゲームマーケット」は2000年4月、東京・神田のビルで電源を使わないアナログゲームの交換会としてスタート。400人で始まったイベントは年々規模が拡大。13年から場所を東京ビッグサイトに移すと、今年5月に行われた「2016春」では、初めて参加者が1万人を越え、今回は1万2千人に達した。会場には約530のブースが出展。600点を超すゲームが販売された。9割が個人、1割が企業ブースだという。


参加者数と出展者数の推移
出展「ゲームマーケット」事務局

ゲームの分野はまさに多種多様。カードゲームを中心に、人狼ゲーム系(※1)、テーブルトークRPG(※2)、パズル系、ブロックを組み立てるものなどなど。価格は1,000円~2,000円が主流だが、5000円~6000円の大がかりな仕組みのものもある。
そんなパズルゲームの魅力について、参加者に聞いてみると「コミュニケーションが楽しい」「知らない人同士でできる」「みんなで協力して課題を克服したときの達成感」といった声が聞かれた。出展者の一人シナリオライターの瀬戸さんによると「道筋が作られているデジタルゲームと違い、物語をプレイヤー同士で紡いでいける」のが大きな魅力だと言う。

イベントを統括するゲームマーケット事務局の刈谷さんにも話を聞いた。
「やはり一番は“思いやり”に満ちたコミュニケーションの楽しさ。」を挙げた。その上で「斬新なアイデアに溢れた作品が多い。アナログがそうなる理由、逆に言えば、デジタルがそうならない理由は、開発体制がシンプルか複雑かに負うところが大きいです。
個人の裁量で一気に完成させられるアナログゲームは、実験的な作品が作りやすく、わけのわからないアイデアにあふれたものが生まれやすい傾向にあります。デジタルゲームは関わる人間や会社が多くなるので、失敗することが許されず、どこかで見たような売れてるゲームのコピーしか作れないということはあるでしょう。ですので実際、ゲームマーケットの出展社さんの中にも、本業はデジタルゲームのスタッフという方は多いようです。」

 

 

 

 

 

 

ピックアップ 注目ゲーム

そんな刈谷さんに注目のアナログゲームを挙げてもらった。

『狩歌』(出展:Xaquinel)
「歌」で「カルタ」をしようというユニークな作品だ。眼前には「夢」「君」「きっと」など歌詞に出てきそうなワードが書かれたカードが並ぶ。スマホなどでアトランダムに曲を流し、そのワードが出てきたところでカードを取る。曲を流しながら、どこでその歌詞が出てくるか予想がつかないため、何とも言えない緊張感が漂う。

『狩歌』

 

『アニュビスの仮面』『モニャイの仮面』(出展:ギフトインダストリ)
スマホのVRを使ったゲームで、アナログとデジタルを融合させた作品だ。参加者の一人、ゲームマスター(ゲームを主導する役割の人)がVRゴーグルをかぶり、目の前に現れるダンジョンを捜索しながら、口頭で周りの人に情報を伝える。周りの人はその情報を頼りにマップを作り上げていき、宝物を探したり、ダンジョンからの脱出を図ったりする。
『アニュビスの仮面』は2016年4月に発売されており、続編の『モニャイの仮面』は2017年春の発売を予定しているとのことだ。

『アニュビスの仮面』

VRゴーグルをつけたプレイヤー

『モニャイの仮面』VR画面(地上)

『モニャイの仮面』VR画面(水中)

マップも立体になっている

『モニャイの仮面』プレイの様子

■拡散のワケ

ここまでアナログゲームの人気が高まってきた理由として、前述の刈谷さんは「SNS上で写真や映像をUPできようになったのが大きい。なかなかコメントだけでは楽しさが伝わりにくかったが、写真や映像によって『楽しそう』と思って参加してくる人が増えた。」と語る。さらにSNSの呼びかけでメンバーも集めやすくなったという。アナログの拡散にデジタルの進化が寄与しているわけだ。
取材をしている中で、ゲーム実況をやっているマオーさんに話を聞くことができた。
「デジタルゲームの実況はそのゲームのファンしか見に来ない。それに比べアナログゲームの実況はいろんな層の人が見に来るので、最近アナログゲームの実況が多い。」

■不気味な洋館の中で…

こういったアナログゲームにはもっと大がかりなものも登場している。
その一つと言えるのが阿佐ヶ谷アニメストリートに12月6日にオープンしたリアルテーブルトークカフェ「DARKGAME」だ。不気味な洋館の中で、北欧神話を基にしたテーブルトークRPGが行われる。初対面の参加者同士の中で、誰が脱出できるのかを競うのだ。イベントの日には、予約が取れないほどの人気だとか。

リアルテーブルトークカフェ「DARKGAME」

■“おひとり様”の時代に…

話を「ゲームマーケット」に戻します。
現代は、煩わしい人間関係を避けて“ぼっち”“おひとり様”でいることを好み、ソーシャル上での人間関係のみを構築したがる人が増えているとよく言われる。しかし「ゲームマーケット」を訪れてみると、そうとばかりも言えないように思います。ある出展者が語ってくれた、「オタクな人はコミュニケーションが苦手、でも人とのつながりを求めている。そういう意味では(アナログゲームは)ハロウィンに似ている。」
図らずも“ぼっち”“おひとり様”になっているが、実は心の通じる生のコミュニケーションを伴った人間関係を求めている、
そんな人が増えていて、アナログゲームの人気を下支えしているのではないでしょうか。
ある参加者に取材した際、口下手らしく、あまり話を聞けなかった。しかし彼がゲームマスターになったとたん、実に饒舌にゲームを進めていました。きっと彼はこの日、自分のコミュニティを増やしたに違いありません。
アナログゲームは不思議な力をもっているようです。

 

(※1)市民チームと人狼チームに分かれ、会話をしながら相手の正体を見抜いていく。どちらが生き残るかを競うゲーム。そのシステムをベースにしたもの。
(※2)、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶ“対話型”のロールプレイングゲーム。

 

(記事:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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