ザ・インタビュー 竹宮惠子先生 vol.2
~好奇心のススメ~

Fields × JAPACON “Contents & Human Future Lab.では、漫画家の先生のヒーロー像を毎月おひとりずつインタビューしていく予定です。
このインタビューでは、作家の皆さんの成り立ちや作品に対する想いを、ヒーロー、ヒロインという言葉をキーワードにしてお伺いしていきます。

スペシャル・ヒーロー・シリーズ、今回は竹宮惠子先生をお迎えしてお話を伺います。
竹宮先生は、漫画家の他に、京都精華大学の学長、文部科学省の中央教育審議会委員を務められるなど教育者としての顔もお持ちです。竹宮先生には、クリエーターの未来についてもお伺いいたします。

■漫画をめぐる環境の変化

瀬尾:
デビューしてから時間はたっても先生の創作に対する情熱はお変わりないのですね。しかし、漫画や書籍をめぐる環境は変化したと思いますが、いかがお感じですか。

竹宮先生:
そのとおりです。特にテレビとのメディアミックスで売り上げが爆発的に増えました。多くの人たちに作品が読まれ、愛されることは好ましいことですが、才能ある作者を一つの作品に縛り付けてしまう弊害もあります。売れてしまうと、描き続けなくてはなりません。編集者も人気作品を存続させるため、部数を伸ばすため、スタッフを増員します。そうなると、漫画はチームで作る作品、テレビ番組と変わりません。

瀬尾:
ネットで人気に火がつく作品もありますよね。

竹宮先生:
ありますね。ネットで売れて、単行本が出版され、書店で平積みされるものもあります。電子コミックは新たな流通メディアです。一方で漫画雑誌は厳しい時代を迎えるかもしれません。しかし、発行部数さえ誤らなければ漫画雑誌は存続できると思っています。ただし、従来型の例えば少年全般向け、少女全般向けの漫画雑誌ではなく、特定の読者層にむけた雑誌に変化するでしょう。メディアが変化する中、漫画を世に送り出すための新しい戦略が必要になります。

瀬尾:
確かに、作品をめぐる環境は変化しています。作品創作そのものにも対応が必要だと私は感じています。人工知能(AI)の技術が急速に進み、間もなくAIが猛スピードで作品を仕上げるようになります。写真家の私にとって、AIは脅威です。漫画家が漫画家であり続けるためには何が必要と思われますか。

竹宮先生:
私は、漫画は作家の個性を発揮できる表現方法と思っています。皆が知っているCMで4コマ漫画を作るという課題で学生が仕上げた作品に同じものはありません。小間の取り方、場面を切りかた、画面のアングルなど皆違います。とかく若い漫画家は、本筋ではない些末なところで悩んでしまいがちです。ならば、AIにストーリーを作ってもらい、漫画家はその表現に専念できます。

瀬尾:
なるほど。クリエーターとAIのコラボレーションですか。AIはクリエーターにとっての脅威とばかり感じていましたが、興味深いお話です。考えてみると、AIが過去の作品全てを学習しつくしてしまったら、そこで成長を止めてしまいますね。

竹宮先生:
その通りです。機械は自浄努力ができません。不確定要素を投げ込めるのは人間だけです。

■好奇心のススメ

瀬尾:
とはいえ、未来はクリエーターにとって厳しい時代になることは否定できません。先生が接している学生さんはどのように感じているのでしょうか。

竹宮先生:
学生たちは、「新しい漫画が描ける余地はあるか」と質問します。学生は、プレッシャーを抱え込んでしまうのです。私は「テーマが同じでもあなたが描いたものは別の作品」と答えます。若い人たちに自身の個性をのびやかに発揮してほしいと願っています。そのためには、実体験が大切です。いろいろな人とのつながり、知識を得ることで自分の核が出来上がります。小林さんは、私の学生とあまり年齢が変わりませんね。もし、小林さんの目の前に開けてはいけない扉があったらどうしますか。

小林:
開けたいとは思いつつも、開けられないと思います。私の世代は、現状維持を好む場合が多いように思いますから。

竹宮先生:
そうですか・・・。私は、開くかどうか、ドアに手をかけるまではできると思いますよ。

瀬尾:
私は、ドアを開けてしまいますね。でも、ハンカチを使って細心の注意を払います。(笑)
私は好奇心が行動の原動力になり、そして好奇心で人は変われると思っています。

竹宮先生:
そういえば、長く漫画家を続けている人は好奇心旺盛です。それに加え、私は、偶然を大切にしたいと思っています。例えば、学生が私に質問するか、しないか、あるいは、私がそれに答えるか、答えないか。この偶然で、未来に変化が生じるのではないかと思うのです。

瀬尾:
現状維持を求めるのが今の若者であれば、先生の時代はいかがでしたか。

竹宮先生:
私たちは、戦後間もない時代に育った世代です。古い知識の何を捨てるかということを任されていました。そして、私は、世の中の流れを見ることの大事さと、人数の多い団塊世代は時代を動かす力があることを信じていました。

小林:
私たちの世代には、先生のような強い独立心を持つ人はとても少ないような気がします。

竹宮先生:
それは、残念なことです。独立心と好奇心を持つことの大切さを知るべきと私は思います。

瀬尾:
幼いうちから、何が幸せかという問いかけが必要なのでしょう。今の若い人たちはリスクを取りません。好奇心をもって新しいところに飛び込むこと、その楽しさを教えるべきではないでしょうか。

竹宮先生:
私もそう感じます。そういえば、私は足を骨折したことがありました。普通、骨折は不運や失敗ですよね。しかし、私は車いすや松葉杖の経験を得ることができました。想像とは異なる車いす生活を楽しんでいる私がいました。

瀬尾:
骨折さえも、楽しんでしまう先生のバイタリティーには脱帽です。最後に、若者と接する機会が多い先生から若者へのメッセージをお聞かせいただけますか。

竹宮先生:
安心、安全の予定調和の枠の中にいてはいけません。若い人には、予測できない未来をしっかり手の中に持つこと、好奇心を持つことの楽しさを是非知ってもらいたいですね。好奇心を持つことにお金はかかりません。好奇心で自らを広げ、深める楽しさをぜひ知ってもらいたいと思っています。

■編集後記

取材の日は土砂降りでしたが、先生は、待ち合わせ場所にさわやかに登場されました。インタビュー内容は多岐にわたり、困難な状況を見据える話題の時も終始柔らかな表情で、肯定的な解決策をお話されていました。そこには、物事を正しく見極め、冷静に対処する力強さがあります。学生たちに囲まれ先生はどんなお話しをされるのだろう、などと想像が膨らみます。
そんな先生が、少女時代、自作の漫画を見せた方、先生に漫画家になる決心をさせた方はどなただったのでしょう、好奇心がわいてきます。

>>ザ・インタビュー 竹宮惠子先生 vol.1 ~創作への思い~

■インタビュアー紹介

瀬尾太一
コンテンンツ・ポータルサイト運営協議会(JAPACON)統括主査。写真家。日本写真著作権協会常務理事、日本複製権センター副理事長などを務める。クリエーターをはじめ、幅広いジャンルの方々と交流を持つ。

小林真希
フィールズ株式会社研究開発室(フィールズ総研)勤務。

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