女性の心を掴むヒーロー作品とは?
消費行動タイプ別の分析から見える、女性の好む作品傾向をレポート

「ヒーロー作品」と聞いて、どのような作品を思い浮べるでしょうか。多くは、「男性」をターゲットとした作品が思い浮かぶかも知れません。もちろん、女性にも人気のあるヒーロー作品はありますが、殆どの場合、意図して女性を狙ったものではありません。
コンテンツ消費における女性市場が伸長を続けている現在、コンテンツへの接触が多い若年女性を意識したコンテンツ作りが大切になってくると思われます。今回は、若年女性の中でも20代女性に注目し、彼女たちの価値観やコンテンツ嗜好を分析することで、女性の心も掴むヒーロー作品について考えてみます。

■20代女性は「支出層」 「布教層」 「消極層」の3つに分けられる
近年、腐女子や夢女子など、趣味や嗜好から女性をクラスタリングした言葉をよく耳にします。しかしそれらの分類は、コンテンツに対する”行動”の特徴は見えてきません。そこで、今回の研究では、「コンテンツへの接触に関連してどのような行動をとっているか」に注目し、20代女性をクラスタリングしました。まず24~29歳の女性にインタビューを行い、普段触れているコンテンツに対する関連行動を聞いたところ、主に以下の9つが抽出されました。
1.直接会って、友人・知人に勧める
2.SNSやメールで、友人・知人に勧める
3.知人、友人に勧める際にDVDやBlu-rayなどを貸す(プレゼントする)
4.インターネットに感想や評価を書きこむ
5.情報をまとめたり整理して、インターネットに投稿する
6.二次創作物を制作して公開する
7.関連する情報を調べる
8.関連商品・グッズを購入する
9.購入した商品・グッズを中古で販売する

当社では、2015年末に、余暇やコンテンツに対する行動・価値観などについてのWebアンケート調査「Fields Yoka Survey 2016」(※1)を行いました。その中で、余暇やコンテンツに触れる際の関連行動として上記9つの要素を設問に組み込みました。
アンケート調査の結果を元に、20代女性834名を9つの要素を用いてクラスター分析(※2)したところ、以下の3つに分類できることが明らかとなりました。()内は該当人数です。

①支出層(43名)…関連する情報を調べる・グッズを購入するといった行動が特徴。
②布教層(100名)…友人や知人に勧める・ネットに投稿するといった行動が特徴。
③消極層(691名)…コンテンツに対してあまり行動を起こさない人。

今回は、コンテンツ関連行動に積極的な「支出層」「布教層」に特に注目します。これらに該当する人々は、いったいどんな人たちなのでしょうか。先述のWebアンケート調査から、いくつかの分析結果をご紹介したいと思います。

■安定志向の「支出層」、上昇志向があり社交的な「布教層」
まず、支出層の性格・価値観などを見てみます。支出層の人々は、「地元で安定した生活を送りたい」(67%)、「生まれ育った場所から離れたくない」(47%)に該当する人の割合が、他クラスターに比べて高く、安定志向が強いことが分かりました。一方、布教層の人々は「仕事で成功したい」(71%)、「社会的な地位を得たい」(52%)と回答した人の割合が他クラスターよりも高く、上昇志向が高いことが分かりました。また、「沢山の人と交流したい」(60%)と回答した人は、他クラスターが40%台であるのに比べて高くなっており、社交的な人々であることが伺えました。(図1)。

■「布教層」はSNSでの情報発信に積極的
主要な5つのSNS(LINE、Twitter、Facebook、Instagram、Pixiv)について、直近1年間で利用したことがあるかを尋ねました。すると、布教層はPixivを除く4つのSNSにおいて、1年以内に利用したことがある人の割合が他クラスターよりも多く、SNSと親和性の高い人々であることが伺えました(図2)。また、SNSの使い方においても、「投稿する」と回答した人の割合が全てのSNSで最も高く(図3)、情報発信に対してとてもアクティブであることが分かりました。

■「支出層」は特徴的なコンテンツ嗜好を持つ
日本国内の有名IPを中心とした90作品について好きかどうかを尋ね、好きだと答えた作品に対して、その作品の魅力をこちらが指定した28項目の中から3つまで挙げてもらいました。今回は、双対尺度法(※3)を用いて、各クラスターと魅力要素をマッピングしました(図4)。この手法では、各要素の「相対的な近さ」を平面上にプロットできます。つまり、固まってプロットされている層は好みが近しいと言うことができます。
それを踏まえてプロットされた図を見てみると、まず、20代の男女は好みが離れていることが分かります。さらに、20代女性の中では、「布教層」「消極層」が20代女性の平均に近い一方で、「支出層」は離れたところに位置しており、特徴的な嗜好を持っていることが明らかとなりました。

■ビジュアル重視の支出層、テーマ性重視の布教層
次に、各クラスターが重視している魅力要素のトップ3を見てみます。
20代全体では、1位「アクションシーン」、2位「成長」、3位「世界観」となりました。支出層は、1位「ルックス・ビジュアル」、2位「世界観」、3位「信念・生き方など内面性」でした。また、布教層では、1位「成長」、2位「ルックス・ビジュアル」、3位「信念・生き方など内面性」となりました。
更に、各層が相対的に重視している要素も抽出しました(図5)。まず、布教層が20代女性全体と比較して相対的に重視している要素見てみます。先述の通り、布教層は20代女性の平均と近い嗜好を持っていますので大きな差は見られませんでしたが、僅ながら「テーマ・メッセージ」の重視度が相対的に高い結果になりました。一方、支出層が20代女性全体と比べて相対的に重視しているものでは、「ルックス・ビジュアル」「役者・声優・楽曲」が抽出されました。
この結果、例えば支出層に向けた作品を考えた場合、トップ3に含まれる要素だけではなく、「役者・声優・楽曲」も重視すると良いことが伺えます。
各層が相対的に重視する魅力要素を持った作品例としては、支出層では『刀剣乱舞』、『初音ミク』、『戦国BASARA』、布教層では『おおかみこどもの雨と雪』、『ハリー・ポッター』、『鋼の錬金術師』、『ベイマックス』が挙がりました。

■最後に
これまでの分析をもとに、女性へのヒーローコンテンツの訴求に向けた示唆についてまとめます。
20代女性への訴求においては、まずコンテンツへの還元が期待できる支出層・布教層に向けたコンテンツ作りが必要でしょう。そしてコンテンツを作る上では、支出層には「ルックス・ビジュアル」や「役者・声優・楽曲」、布教層には「テーマ・メッセージ」の比重を高めたコンテンツを考えると良いのではないでしょうか。
今回は、作品の“要素”についてのみ言及しましたが、分析を進めることで、効果的なキャラクター造形、ストーリー構成、あるいはプロモーションの手法なども見えてくるかも知れません。

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(※1)「Fields Yoka Survey 2016」
当社が2015年12月に実施したWebアンケート調査です。全国の小学生~64歳の男女10,000人に対し、余暇に対する行動や価値観などについて聞きました。
(※2)「クラスター分析」
異なる性質のものが混ざりあっている集団(対象)の中から互いに似たものを集めて集落(クラスター)を作り、対象を分類しようという方法を総称したものです。
(※3)「双対尺度法」
各項目の相対的な距離を算出し、2軸平面上にプロットする手法です。本研究では、各層から挙がった魅力要素の割合をインプットデータとして使用しています。
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(記事:小林真希)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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