日本独自に発展したアニメ映画の上映スタイル「応援上映」

『KING OF PRISM by PrettyRhythm』、通称『キンプリ』が、日本でちょっと変わったヒットを巻き起こしています。今年の1月に上映を開始した本作は、当初3週間限定かつ6館限定の予定でした。しかし、「応援上映」という上映スタイルが口コミで広がり、公開館数は90館以上に増加、いまだに上映が続いているロングラン作品となっています。なぜ『キンプリ』はここまでヒットしたのでしょうか。人気の秘密を探ります。

■『キンプリ』とは
『キンプリ』は、アニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』(2013)のスピンオフ作品です。『プリティーリズム・レインボーライブ』では、主人公が歌・ダンス・ファッションコーディネートを競う「プリズムショー」に出演するのですが、『キンプリ』はこのショーの出演者、通称「プリズムスタァ」を目指す男子たちの物語です。彼らの憧れであり、物語の中心となる「Over The Rainbow」というユニットは、『プリティーリズム・レインボーライブ』の最終回で結成されたユニットであり、アニメとも繋がりがあります。

■様々な上映スタイル
近年はDVDやスマートフォンの普及に伴い、映画館を利用する人の減少がささやかれていました。しかしこれに負けまいと、3Dや4DX/MX4D、IMAXなど映画館のアトラクション化が進んでいます。
『劇場版 ガールズ&パンツァー』(2015)は、通常の「4DX上映」に加え、4DXのモーションをMAXにした「エクストリーム上映」、歌や踊りなど自由に行えるインド発の「マサラ上映」、特別な音響機材を使用した「極上爆音上映」など、様々なスタイルで上映が行われました。『キンプリ』が行ったのは「応援上映」と呼ばれるもので、コスプレ・サイリウム・声援・コールができる上映スタイルです。「映画は静かにじっと観るもの」としている日本においては、珍しい鑑賞スタイルと言えます。

■キンプリの成功要因
観客が声を出しても良い、という上映スタイルが日本で認知されたのは『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(2010)からだと推測されており、これまでにも『ラブライブ!』や『THE IDOL M@STER』、『プリキュア』などが応援上映を行ってきました。『キンプリ』がこれまでの作品と違うのは(1)はじめから応援上映を前提とした作品であるという点と(2)熱心な布教活動やファンの口コミがあった点にあると考えられます。

■観客のパートが存在する
これまでの応援上映は、基本的に歌やダンスのパートで一緒に歌ったり応援したりするスタイルが一般的でした。しかし『キンプリ』の場合、歌のパートはもちろん、それ以外にも観客が参加できるパートが多数用意されています。字幕が出ればその通りに演じ、字幕がない所でもタイミングを見つけてそれぞれが自由な形で参加します。観客が担当するキャラクターもスクリーンに登場するのですが、顔が描かれていないのも特徴です。(これらの様子はこちらでチェック:https://youtu.be/FIJk6pT8U_A)。

■Twitterでの口コミ拡散がすごい
Twitterで日本語のハッシュタグ「#キンプリ」や「#キンプリはいいぞ」を検索すると、「何度でも観たい」「この素晴らしさは観た人にしかわからない」というコメントや実体験レポート漫画など、内容は全く分からないのについ気になってしまうツイートが数多く投稿されています。また、既に観た人たち同士でも「ここの映画館の観客は質が高い」などの情報交換がされているほか、セロリ(作中のキーアイテム)の持ち込みを許可する映画館があらわれると、その映画館の対応のすばらしさを称賛するコメントが多数書き込まれ、拡散されました。

■日本文化とのつながり
観客が掛け声を出すことを前提とした作品作りは歌舞伎にも存在しています。
歌舞伎では”大向う”と呼ばれる見巧者たちが、劇の雰囲気を盛り上げるために「○○屋」や「待ってました!」などの掛け声が入れるのが通例で、役者がそれに応えるところまでひとつの作品です。このほか、出演者のお決まりのセリフに対し、観客全員でお決まりのセリフを返す、というパートが番組構成に組み込まれているTV番組も多数あります。
『キンプリ』はこのような、“観客とともに創り上げる作品”として捉えることもできるかもしれません。

映画館側の対応次第で異なる映画体験ができるのも、映画館で観る楽しさのひとつではないでしょうか。いつか『キンプリ』のように映画館ごとに異なる楽しみ方が提案されるようになれば、同じ作品であってもいろいろな映画館で観るという楽しみ方が生まれるかもしれませんね。

(記事:小室)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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