世界的な知名度を誇るアニメスタジオGONZOの製作スタンスと手法 -後編-

前回から引き続きGONZOのアニメ制作について、アニメ事業部門制作部部長の依田一さんにお話をうかがいました。

――沖縄ゴンゾを設立されたことで地方創生としての役割に期待する声もあります。設立の経緯や今後の展望などお聞かせいただけますか?

依田 まず沖縄県がエンターテイメント産業を誘致しているということもあるんですが、当然みんな沖縄に行きたいじゃないですか(笑)、だから人を集めやすいんです。あと沖縄ゴンゾっていうのは3DCG専門のスタジオなので、スタッフは当然1日中モニターに向かっているわけですから、ふと外を見れば青い海が広がっている方が精神的にもいいんでしょうし、賃料などの経済的な理由もあります。3DCGの場合、紙のやりとりがないから東京から離れていてもやっていけますしね。

――GONZOさんといえばCGへの取り組みにも積極的な印象があります
依田 他社でもすでにやっていることですが、タブレットで原画を描くっていうのはウチでも始まっていて、業界全体が今後はペーパーレスになっていくんじゃないかと思います。ペーパーレスになれば全国各地に散らばっている原画さんのデータを、東京の進行が一覧性のあるソフトで「いまどのカットがどこまで進んでいて、これは作監のチェックが入ってない」とか管理するっていう形になるんじゃないでしょうか? ただいまのところはいきなりタブレットで仕事を始めた若い子たちを、紙でやってきたベテランが教えている状況ですが……将来的にはそうなっていくんじゃないでしょうか。

――それでは今の沖縄ゴンゾは足場を固めている段階、といった感じでしょうか?
依田 そうですね、もちろん今後は大きくしてはいきます。いまはまだ沖縄ゴンゾのスタッフも少ないのですが、状況に応じてどんどん拡張していくつもりではいます。

――最後に「これぞGONNZO」という作品づくりを継続するため、今後の制作環境をどうしていきたいとお考えですか?
依田 第一には「クリエイターさんが働きやすい環境」ということです。もちろん報酬も含めての話ですけど、まずは継続してお仕事を供給できる環境作りをしていきたいですね。どうしてもこの世界は忙しい時期とヒマな時期があるので、仕事がないときには1か月も2か月も放っておく感じになってしまいます。クリエイターさんはだいたい個人事業主なので、それでは生活できなくなってしまう。その辺のバランスを考えて、常に一定の仕事を供給できるようなシステムをいまでも心がけているんですね。それが「働きやすい環境作り」になるんじゃないでしょうか。

――「いままでも、これからも」ですね
依田 平たく言えば「飼い殺しにしない」ってことなんですよね。あとはスケジュールが乱れて、現場のスタッフさんに徹夜とか負担を強いる構図というのはいまだに起きてしまうんです。

――どこも共通の悩みですが、原因は何だと思われます?
依田 いろいろあるんでしょうけど、一番の原因は「ちょっとでもクオリティのいい作品を作りたい」って思うからそうなるんですよ。ハッキリ言ってスケジュール最優先で「ちょっとぐらいおかしくてもいいや」って進めたらそうはならないんです。でもそれだと監督さんが納得しない、作画監督さんが納得しない。ところが「いいもの作るから放送日ずらしてよ」っていうわけにもいかないわけですから、結局……そうなってしまいます。

――スケジュールとクオリティは永遠の課題ですよね
依田 でもそういう意識って大事だと思うんです、現場の人間が「ちょっとでもいい物を作りたい」って思わなかったらおしまいなので。もうちょっと早く妥協した方がいい物作れたよねっていうことも多いんですけど(笑)、私はそれでも「ちょっとでもいい物を作りたい」っていう気概も失わないで欲しいなぁ、って。

――プロデューサーの器の見せどころですよね。「俺が責任を取るからいいものを作れ」って言う人がいるだけで現場は安心すると思います。
依田 これで本当に落ちたらどうしよう(笑)。まぁ、局の方にも「クオリティを上げるためなら前日納品でもいいよ」って言ってくださる方がいるんですよ。当然「徹夜したから必ずいいものができる」っていうわけじゃないんですけれども、やっぱり「いいものを作ろう」という気概があるなら、それを尊重できる体制を作りたいなって思います。

――依田さんが関わった作品の中で、一番理想的な体制だった作品というと
依田 ないです、だいたい……ゴタゴタしますね(笑)。

――でもそこで満足してしまうとダメなのかもしれませんね
依田 そうなんですよ。たとえば口パクが合ってなくても「一般の人は違いなんてわからないじゃないか」っていう話ではあるんですけど、そういう細部も直していくことで“ジャパンクオリティ”の作品が生まれたんじゃないかな。

――そこで「もう、いいや」っていう人はほとんどいないですよね、日本の現場には
依田 そういう意味で職人気質というか、アーティストであり職人でありっていうところですね。だから少ない給料で頑張ってくれる若い子には「ありがたいことだな」って思います……それに甘えていてはいけないんですけど。

――ありがとうございました。

クオリティの高い映像作りに定評のあるGONZOさんですが、意外にも(?)熱が入ったのは制作環境にまつわるお話でした。やはり優れた作品を作るためには、クリエイターが作品作りに専念できる環境を整えてこそ、ということなのでしょうね。

>>前編はこちら

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