世界的な知名度を誇るアニメスタジオGONZOの製作スタンスと手法 -前編-

『バジリスク~甲賀忍法帖~』や『アフロサムライ』といった東洋的な世界観や、『ラストエグザイル-銀翼のファム-』や『蒼の彼方のフォーリズム』といった壮大な作品を世に送り出しているアニメスタジオ・GONZO。その独特の作品群を生み出した、アニメーション製作におけるスタンスや手法について、アニメ事業部門、制作部部長の依田一さんにお話を伺いました。

――まずは企画の部分についてですが、GONZO様の企画会議ではどのようなシステムなのですか?
依田 じつは「企画会議」という名前の会議はウチにはないんです。一番多いのは外部のスポンサーが「この作品でアニメを作りたいんだけど、GONZOさんがやったらどういう風に作れますか?」って言ってくる形ですね。そこから作品の内容やスタッフの体制、見積もりやスケジュールなど相談していきます。

――外部から持ち込まれる企画ですね。
依田 一方プロデューサーからの提案は、監督はこの時期空いてるからこの人で、だったら作画監督はあの人で……とか具体的な、実現可能なアイデアを持ってきます。そこから「原作はどうなってるのか?」って問い合わせて、制作委員会を立ち上げていく。こういう企画はたくさんあって、10個提案したら1つ通るか通らないか、ですね。

――打率1割ですか、狭き門ですね。
依田 もちろんプロデューサーに限らず、誰が発案してもいい環境になっています。当然クライアントさんが予算付きで持ってくる企画の方が実現性は高いんですけど。ウチでいうと『ラストエグザイル-銀翼のファム-』なんていうのはオリジナルで、千明監督をメインにみんなでシナリオを考えてできた珍しいパターンだったと思います。

――やはり「何万部売れてる原作」という方が有利ですか?
依田 あんまり冒険しようなんて人は、クライアントさんの中には多くはないですから。コミックが1巻あたり何十万部も売れてるとなると、各社で取り合いになりますよね。

――でもアニメ会社さんって“競合”より“協業”のイメージがあります。
依田 「グロス」と言って、たとえばウチがTVアニメを同時に何本も抱えてオーバーフローしそうなとき、よその会社に「第3話と第7話をやってもらえませんか?」って言ったり、その代わりウチが人が余り気味な時期には「御社のシリーズ、2話ぐらいやりますよ」って言ったりします。あんまり「火花を散らす」って感じではないですね、もちろん監督の取り合いとかはありますけど(笑)。

――海外展開のお話なんですけど、御社のサムライモノのような“ザ・日本”みたいなのは海外でヒットしやすいのかな? と思うのですが。
依田 『バジリスク』などの場合は海外を意識したわけではないと思うんですね。ただ常に一緒に仕事をしている木崎監督をはじめ、日本刀のアクションを得意にしているクリエイターさんがいますので、そういうものが作りやすい環境はあります。最初から海外を意識してしまうと「何か変」な物になってしまう可能性が高くて、『サムライ7』にしろ『バジリスク』にしろまず日本で評価されたからこそ、だと思います。

――考え方としては、あくまで日本向けにいい物を作って……というわけですね。
依田 はい、「アメリカ人が見るからこういう風に作ろう」っていうことはまったく考えてないです。ただ『アフロサムライ』に関しては、サミュエル・ジャクソンさんっていうビッグネームに原作を気に入っていただいて話が進んだ、かなり特殊な例ですね。

――他になにか海外市場で変わったことなどありますか?
依田 ウチでは海外に技術輸出をしているんですよ。マレーシアの政府がやっている映画の第三セクターのようなところがありまして、2010~2012年に現地まで行って日本式のアニメの作り方を教えていたんです。こういうのは今後も色々な国でできるんじゃないかな? と思っています。

――それは何か作品などの形にしたんでしょうか?
依田 『サトリア』っていう、昔のマレーシアに実在した英雄の伝説をアニメにしました。言ってみれば向こうの時代物なんですけど、ファンタジーにして友情と戦いをテーマに敵を倒して民衆を救うっていう。そんなアニメ的なストーリー作りから「日本のアニメっていうのはこうして作るんですよ」って教えたんです。

――単純に作画などの技術だけ教えるのではないんですね。
依田 “ハート”の部分も含めてですよね。やっぱり海外の人たちには「アニメは日本が一番だ」っていう認識があるんですよ。でも実際に関わったことはあっても、自分たちで一から作るとなるとどうしたら日本のクオリティになるのかわからないようです。

――実際海外市場というのはビジネス的にはいかがなんでしょう?
依田 制作委員会への出資率などから推測すると日本市場の10%ぐらいでしょうか? まだまだ日本が収益の中心ですよ。ただし今後は伸びる可能性が高いのは中国ですかね。最近日本でも放送された『霊剣山』とかありましたね。

――『霊剣山』は日本の作品とは逆に、日本でフィギュアを作って中国で売るらしいです
依田 それはアニメと同じで、お金を出してハイクオリティなものを作ろうと思っても自分たちの国では作れないからでしょう。それもすぐにできるようになるとは思いますよ。一昔前の韓国がそうでしたね、今では技術的には“ジャパンクオリティ”のアニメが作れるでしょう。だから中国も、何年か後にはクオリティ的にも良いモノを作れるようになると思います。

<<後編へ続く

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