日本コンテンツ市場の鍵を握る”New Type”を研究! 新たな時代の若者たちの、消費の傾向や価値観とは?

“未婚若年男性”が日本のコンテンツ市場の長期的な発展のカギを握るのではないか、そして、彼らの中に “新時代におけるコンテンツ消費の在り方”を先取りしている消費クラスター“New Type”が誕生しているのではないか。今回、上記の仮説に基づきながら、大規模定量調査や行動観察調査の結果を踏まえ、未婚の若年男性層の余暇・コンテンツ消費を研究いたしました。

はじめに、なぜ20~30代前半の若年男性にフォーカスしたのか、そして、彼らのコンテンツ消費の概観を簡単にご説明いたします。

■「20-30代で起こるコンテンツ離れ」

22歳までをピークに、コンテンツ消費に充てられる時間・お金は減少する。大規模な定量調査を分析したところ、22歳までは消費時間も消費金額も増加していたが、23歳、多くの人が就職や結婚等を迎える年齢を超えると、その後はコンテンツに投じる時間・お金ともに減少の一途を辿ることが明らかとなった。

就職や結婚等で消費時間が減少することはある程度やむを得ないかもしれないが、自由に使える時間、余暇時間全体の減少幅と比べてみると、必要以上にコンテンツ消費に充てられる時間が削られていたのである。ライフスタイルが大きく変わる中で、そのライフスタイルやニーズに適したコンテンツ消費の在り方を彼ら自身が見出せていない、また、提供する側が提案できていない可能性が高いのではないか。

ただ、一方で、コンテンツ離れが起こってはいるものの、23-34歳の未婚男性が年間にコンテンツに投じる金額は3,100億円を上回り、1日あたりのコンテンツ消費時間は7時間を超える等、現時点においても、コンテンツの一大消費クラスターであることも事実である。

この、一大消費クラスターではあるが、必要以上にコンテンツから離れ始めてしまう層、“若年男性”に対して、きちんと彼らのニーズを踏まえて、コンテンツやその消費の在り方を提案していくことがこれからの発展にとって重要であると考え、より深く、この未婚若年男性の余暇について研究することとした。

■「余暇・コンテンツからみる7つの消費タイプ」

続いて、より具体的に、彼らを外出余暇行動やコンテンツ消費の実態からクラスター分析した結果をお伝えしたい。このクラスター分析結果から、この未婚若年男性を理解する上で、また、彼らにコンテンツを届けるうえで重要となる新たな消費層“New Type”を見出すことができた。

マンガを読む、アニメを見る、ゲームをする等のコンテンツ消費(時間・金額)と、旅行、スポーツ、レジャー施設等の外出余暇の実施率等のデータを基にクラスター分析をしたところ、7つのタイプに分類できることが明らかとなった。

この7つのクラスターをコンテンツ消費時間と外出余暇スコア(外出余暇を軸に、友人と余暇を過ごす度合いを数値化したもの)の二軸でプロットしてみると、 5割超はあまりコンテンツに触れておらず、コンテンツに長時間触れているのは3割に満たないこと、コンテンツ消費が大きく2つに分断されている状況が分かった。

このマス層とコンテンツ好き層の分断はある程度予測されたが、今回、その両者の中間に位置するような、これまでの消費者研究等であまり語られていない “New Type”が抽出された。“New Type”は、マス層よりも積極的にコンテンツに触れ、どの層よりも友人等と余暇を過ごすことを重視している。よく言われるリア充とオタクのハイブリッド のようなイメージに近いかもしれない。
彼らをさらに詳しく分析してみたところ、この世代・7つのタイプの中で最も平均年収が高いこと、また、働いている時間が長い事が分かった。このNew Type層は働いている時間が長いながらも、少ない余暇時間を友人との交流やコンテンツ消費に積極的に投じていた。
彼らは、幅広い交友関係・クチコミの広がりや可処分所得の多さと言った魅力に加え、このコンテンツ消費が減少し始める世代において積極的にコンテンツ消費をしている背景を探ることはコンテンツ離れを防ぐ上で重要だと考え、より深い調査を実施することとした。
次は、“New Type”に該当すると考えた人物を対象とした行動観察調査の結果を踏まえた、彼らを理解する上で重要な要素をご説明する。

■「“New Type”を理解する3つのキーワード」

より詳細に彼らの考えや価値観、コンテンツ消費のスタイルに関する分析結果を説明する。
彼らを理解する上で大事なことは次の3つのキーワードに集約される。

1.「同世代に対する深さ」
彼らの世代は、“車離れ”“アルコール離れ”“ブランド離れ”等、これまでの世代が持っていた消費にまつわる深さが無いと言われている。だが、彼らにも深 さを持つものがあった。それが“世代”である。早い段階から携帯電話やSNSが身近にあったこと、それと同時に学校や会社における縦の関係が希薄化したこ とも影響し、途切れることなく継続している“同世代”との関係が非常に深い。そして、そのことが彼らの考え方や行動に大きな影響を与えている。

2.「コミュニティ志向」
一部で言われるような、自分が生まれ育った出身等、特定の場所・土地への意識はあまりないが、上記1.で触れた同世代との“コミュニティ”が非常に重要と なっている。クラブやサークル・クラス等の学生時代のコミュニティから趣味のコミュニティ等、多様な複数のコミュニティに関わり、それらのコミュニティ を、それぞれのコミュニティの状況・空気に合わせ、笹のように、心地良く漂うことが彼らの生活にとって、より一層重要になっている。そのため、限られた余 暇時間を積極的に友人との交流等に費やしているのである。

3.「道具的なコンテンツ消費」
そして、同じく少ない時間ながらマス層よりもコンテンツを積極的に消費していた背景には、“コミュニティ”を漂う上での、道具としての利用価値をコンテン ツ消費に見出していたことが挙げられる。自分が関わるコミュニティで現在流行っているもの、そのコミュニティで話のネタにできそうなもの、自分の気分を高 められるものなど、純粋にそのコンテンツを楽しむこと以上に、それを消費することで得られる効果を期待したコンテンツ消費がかなり多く見受けられた。

こうした特徴を持つ“New Type”にコンテンツを届けるためにはどのようにすべきなのか、そのポイントをいくつかご紹介したいと思う。

■「“New Type”に刺さる4つのポイント」

年間3,000億円超を消費する若年男性世代、その中でも、その消費パワーや新たな消費スタイルから注目すべき“New Type”。彼らはコンテンツを道具的に消費することが多く、その文脈に沿わせてコンテンツを届ける・プロモーションしていく必要がある。では、具体的に はどうすれば良いのか。その際に考えるべき4つのポイントをご説明したい。

まず、4つのポイントとは、「自分を高めること」、「刺激を得られること」「コミュニケーションを促進できること」、「みんなで楽しめること」である。以降でより踏み込んで説明するポイント、彼らの求める文脈に沿わせてコンテンツを届けることが重要となる。

1.「自分を高めること」
自己啓発的に“自分の知識・スキル”を高めることや、周囲の人からの“評判・イメージ”を高めること、そして、大事な場面で“気分・気持ち”を高めること、そうした“自分を高める”ことを求める傾向が強い。

2.「刺激を得られる」
彼らは、比較的満たされている日々の生活にちょっとした刺激や興奮を求めている。そうした彼らに対しては、ちょっとでもいいので“初体験”や“新たな発 見”、“瞬間的な盛上り・感情の高まり”、“非日常的な体験”を提供すること、それらが得られることを伝えていくことが重要となる。

3.「コミュニケーションを促進できる」
様々なコミュニティを漂う彼らにとって、各コミュニティの「仲間や友人、気になる異性との交流を促進できること」、各コミュニティで会話のネタにできるような「トレンドをいち早く押さえていること」の重要性は高い。

4.「みんなで楽しめる」
同世代の様々なコミュニティに参加し、そこにいる仲間や友人と“同じ時間を過ごすこと”“一緒に何か体験すること”“同じ気持ちをシェアすること”が、彼らが日々の生活で充実感を得るうえで重要な要素となっている。

消費の一大クラスターである若年男性の更なる消費を喚起する上で、さらには、年齢を経るごとに減少し続けるコンテンツ消費を食い止めるためにも、こうしたポイントを踏まえて彼らにコンテンツを届けていくことがこれまで以上に必要となるだろう。

(記:久野亮平)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

Print Friendly, PDF & Email
No Responses

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Print This Post