“距離感が近いアイドル” その魅力とは?

「地下アイドル」という言葉をご存知でしょうか。

TVなどに出ず、数十人規模の小さなライブハウスなどで活躍するアイドルたちのことです。日本では、こういったアイドルを応援することがメジャーなエンタテインメントになりつつあります。

■ アイドルから認知されたい地下アイドルファン心理

地下アイドルファンは、購買行動や行動心理が特徴的なため、一般的に奇異の目で見られがちです。ファンの心理については様々な言及がなされていますが、主なものとして、「ファンとしてアイドルから認知されたい」という欲求があると考えられます。
地下アイドルのライブは、主にグッズやCDの物販売上で成り立ち、購入金額に応じてアイドルと握手・写真撮影・会話が可能です。平日休日問わずライブ回数 が非常に多いことも特徴の一つです。アイドルとのコミュニケーションを求めて連日ライブに通い、一度に数万円の出費も惜しまない人もいるといいます。ま た、独特の踊りのようなファンによる応援パフォーマンス「オタ芸」が目を引きます。これらの行動は、アイドルから覚えてもらうことを求める自己表現として 理解できます。

■ 地下アイドルのライブって一体どんな雰囲気?

秋葉原には地下アイドルのライブが行われている拠点がたくさんあります。「こういうライブってコアなファンたちだけが集まる閉鎖的な場所なんじゃ…」と思いがちですが、中でも『AKIBA ドラッグ&カフェ』は、ライブを楽しみつつ食事が出来るカジュアルなお店です。
取材に訪れた日は『異国のファルマチスタ』のメンバー 松坂瀬奈さんの誕生祭で、誕生日を祝った後、ミニ運動会とライブパフォーマンスが行われました。お客さんが彼女にプレゼントを手渡したり合いの手を入れた り、それに応えて彼女が常連さんを名前で呼んだりウィンクを返したりします。終演後には壇上にメンバーが並び、物販タイムが始まります。CDやグッズを買 うと一緒に写真(チェキ)が撮れ、会話も出来ます。撮った写真は持ち帰ることも出来ますし、自分の名前やメッセージを書いて好きなメンバーに渡すことも可 能で、何度か通えば名前を覚えてもらえそうです。

■ 距離感が近いって…楽しい!!

今回の取材が初体験となる地下アイドルでしたが、体験してみて、距離感の近さが非常に魅力的だと感じました。自分の存在に気づいてもらえたり、直に応援を 伝えられたりするのは、結構嬉しい。大アリーナで行われるようなライブでは決して味わえない楽しさがありました。失礼ながら当初は「マイナーなアイドルを 応援して何が楽しいの?」と思っていたのですが、冒頭にまとめたファンの心理は確かに納得できるものでした。
『AKB48』は秋葉原のAKB劇場という小規模なライブハウスを拠点に「会いに行けるアイドル」としてスタートし、当初は距離感の近さを売りにしていま した。トップクラスのアイドルとなったことでファンとの距離感の近さが薄れ、転換点にさしかかっていると言われていますが、それもうなずけます。

■ 自分の声が誰かに届くことに慣れてしまった私達

TwitterやFacebookなどのSNSやブログがこれだけ普及した今、多くの人が、知らない誰かから「いいね!」やコメントをもらった経験があると思います。自分の言葉が、確かに、誰かに届いたと分かる。あの感覚は、なかなか嬉しいものですよね。
トップクラスのアイドルは確かに魅力的ですが、彼等/彼女等に私たちの言葉は届かない。”あの感覚”に慣れた人たちには、それが物足りなく感じるのではないでしょうか。地下アイドルを応援することは、その欲望を満たすことにつながると考えられます。

■ アイドル応援アプリの流行

今、日本国内では、大小様々なアイドルたちを応援するアプリ『SHOWROOM』や『CHEERZ』が人気を集めています。前者は自分のパフォーマンス (歌でも楽器でもトークでもOK)を、後者は自分の写真を配信するプラットフォームです。ファンはアイドルを応援することができるようになっており、課金 によってたくさんの応援が可能になる点が特徴です。アイドルは誰がたくさん応援してくれているかを見られるため、ファンは自分をアピールするために、課金 してまでアイドルを応援します。自分の存在に気づいてもらえたり、直に応援を伝えられたりするわけで、地下アイドルライブと心理は同じです。ヒートアップ して数万円の課金がなされていることも見られますが、地下アイドルライブを体験した身としては分からなくもないのです。
サービスは拡大を続けていますが、これらのアプリで活躍するアイドルたちを「遠い存在」にさせないことが今後重要になるでしょう。

AKIBA ドラッグ&カフェ
http://akibadrug.com/

(記:河合 利剋)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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