アニソンのニーズとレコード会社の思惑 ―なぜアニソン業界は安定しているのか―

日本では今、アニメソング(以下、アニソン)関連イベントが盛り上がりを見せています。2014年のアニソンライブ売上は60億円で、2013年の35億 円から1.7倍の成長となりました。また、アニメ音楽商品の売り上げはこの7年間安定して推移しています。アニソンはなぜ人気があるのでしょうか。

■ アニソンが盛り上げるライブエンタメ

インターネットの普及によりいろいろな情報が手に入るようになりましたが、生の体験は実際に行ってみないと分からない特別感があります。この流れを受けて 近年急成長しているのがライブエンタメ市場です。2004年のライブエンタメ市場売上額は約901億円でしたが、2014年の売上は約2749億円で、音 楽ソフトを上回る結果となりました。
アニメ市場の中でも同じ現象が起こっています。2013年のアニメ関連ライブエンタメ市場の売上は288億円で、音楽商品の売上246億円を上回りました。このうちアニソン歌手や声優を主としたライブやコンサートは60億円を売り上げています。

■ アニソン人気、安定の裏にはアニメファンの生態あり

アニメ音楽商品の安定した売上やアニソンイベントの盛り上がりを支えているのが、アニソンを愛するファン層です。アニメファン層は、こだわりのある分野の 商品やサービスであれば、それが自分にとって高額であろうと、糸目をつけずに支出する傾向があります。また、その分野のオタクである限り消費を続けるた め、一般的な消費者と比べるとその分野に対する生涯総支出額が高いという特徴を持っています。アニソンイベント会場の多くは物販エリアが占めており、限定 グッズを買うために早朝から長蛇の列が出来上がります。実はアニソンイベントの主な目的は物販であり、チケット代のほかにここでも多くの収益が得られてい るのです。

■ アニソンはアニメファンを増やす

アニソンにおいてはアーティストそのものの知名度や人気はあまり問題ではなく、むしろ作品の内容や雰囲気にあっているかという“質”が求められていると言 われています。つまり、たとえ新人アーティストであっても、楽曲が作品とマッチした質の高いものであれば一気にヒットする可能性があります。そして、ヒッ トしたアニソンや一般アーティストのアニメタイアップをきっかけにしてアニメを見るようになる人も少なくありません。特に近年ではアニソン歌手ではない アーティストがアニメとタイアップする数が増えており、アニメファンの増加に貢献しています。

■ アニソンに次々と新規参入する企業

アニメがヒットしたり曲自体の質が高く評価されたりすれば、新人であってもヒットしやすく、ライブイベントを行うことでさらに多くの収益が得られることか ら、再びアニソン業界への新規参入が活性化しています。例えば、浜崎あゆみやEXILEなどが所属するエイベックスは2014年にアニソンレーベル avex picturesを設立し、レーベル単独アニソンイベント「アニメJAM2014」を開催しています。

■ アニソン市場の課題

アニソンにも課題はあります。まず、アニソンは権利関係が複雑なため、他のメディアで紹介しようとすると手間がかかってしまいます。そのため、音楽業界からはあまり取り上げられません。
また、新人にとってアニソンは飛躍のチャンスである一方、その後のイメージチェンジは困難を極めます。一度アニソン歌手とされたアーティストが一般的な音 楽シーンに参入しようとすると、アニメを見ない人たちからは偏見の目で見られ、アニメファンからはセルアウトのように見られてしまいます。このままでは、 せっかくヒットしても楽曲の知名度もアーティストの知名度もなかなか広がりません。
これらの解決には、音楽業界そのものの構造の見直しが必要となるでしょう。

(記:小室)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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